2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝栄養エネルギー代謝を標的とする抗メタボリックシンドローム研究
Project/Area Number |
22500665
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高山 房子 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (10236367)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 茂 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20033201)
|
Keywords | エネルギー代謝 / 低酸素ストレス / DNA / EPA / コレステロール / 膜流動性 / ミトコンドリア / 炎症 |
Research Abstract |
H23年度実施内容:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)病態動物【PCT/JP2007/52477】へ、コレステロール(Ch)およびn-3多価不飽和脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)とのエステル結合体Ch-DHAやCh-EPA誘導体10mgまたは30mg(DHAやEPA換算投与量)/Kg/毎日の経口投与による動物実験を実施した。実験的飼育期間完了まで経週的にパルスオキシメータ・MouseOxによる動脈血中酸素分圧の計測および化学発光法による白血球(メタリボツックシンドロームや多くの生活習慣病の病態に炎症性サイトカインや免疫細胞が関与し,持続的な炎症反応(慢性炎症)が病態に密接に関与することを想定.活性化白血球からは活性酸素・フリーラジカル種が産生される.血液は経週的に採取が可能得られる試料として病勢の把握に有用)による酸化ストレスおよび赤血球膜試料(血球膜の可塑性・変形能はスムーズな血流の要因)を採取し飼育行った。動物実験終了時に臓器および血液試料を採取した。これらを試料として、肝障害ならびにCh-DHAやCh-EPA各投与の有効性の評価を、血液生化学的肝機能パラメータALT,ASTやγ-GTP活性の測定ならびに病理組織化学的評価法により行った。さらに有効性の機序解明のため、赤血球膜の流動性をESR法にて検討した。病態進展機序や作用機序の解明のため、酸化ストレス、炎症、蛋白や遺伝子発現の評価のため、実験動物から得た血液、肝ホモジネート、核、ミトコンドリア、ミクロソームは調製後-80℃に保存している。H23年度成果:Ch-DHAとCh-EPA(DHAやEPAとしての投与量は文献値の1/30~1/10程度)は、NASH進展リスク低減機能を発揮した。脂肪肝担持動物への一過性の低酸素ストレスを連日負荷することでNASH病態を惹起させるNASH群における動脈血中酸素分圧の低下を、Ch-DHAやCh-EPAは用量依存的に軽減し、さらに、白血球の接着に機能するCD29のNASHでの発現増大の軽減や赤血球膜の流動性の上昇がESR計測で実証されつつある。燃料である脂質を燃やすための酸素を組織に運搬するための血流維持により、病態進展機構として想定した[肝栄養代謝の効率低下-肝細胞内の脂肪滴形成-体内酸素濃度-肝ミトコンドリア機能破綻による活性酸素種の派生=酸化ストレス↑-炎症-血液流動性・血行動態]を抑止することが示されつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的とした2軸の一方である「NASH病態への、Ch-DHAおよびCh-EPAの栄養代謝・炎症性反応・生理機能の各々に関する制御性の解明、生活習慣病の予防、治療への利用の可能性を学術的に解明し、Ch-DHAとCh-EPAの産業的利用の可能性を裏付けるデータを取得する。」については、肝ミトコンドリアATP産生効率による栄養代謝への影響についての詳細検討以外は実施済かつポジティブデータが得られている。これにより、残る1軸「過剰栄養性肝代謝異常-相対的酸欠-脂肪貯留-酸化ストレス-炎症-組織リモデリング-血流停滞-メタボリック症候群(MS : Metabolic Syndrome)進行の解明」についても、動脈血中酸素飽和度の低下とNASH、NASHにおける肝ミトコンドリア障害,酸化ストレスや炎症などの関連の解析が進みつつある。これは当初想定の進展状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)肝栄養代謝の効率低下-(2)肝細胞内の脂肪滴形成-(3)体内酸素濃度-(4)肝ミトコンドリア機能破綻による活性酸素種の派生=酸化ストレス↑-(6)炎症-(7)血液流動性・血行動態の変化に焦点を当て、課題を進めている。 肝ミトコンドリア栄養代謝のATP産生効率による評価と肝細胞内脂肪滴の沈着との相関が得られれば、栄養性肝代謝異常についての確固たる証明になる。そこで、追加動物実験により、(1)、(2)を実施する。 H23年度まで実施実験で得た凍結保存試料による蛋白・遺伝子発現を評価する。過栄養状態の肝臓機能の異常、脂肪肝,代謝されるべき脂肪に対する酸素不足、肝細胞壊死や肝実質細胞と肝臓の間質細胞との相互作用や炎症を解析し、肝臓の機能の破綻状態に基づくメタボリック症候群(MS : Metabolic Syndrome)重症化と治療標的として、栄養性肝代謝異常の概念を確立する
|
Research Products
(1 results)