2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500677
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
千葉 篤彦 上智大学, 理工学部, 准教授 (40207288)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 淳彦 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (70183910)
岡田 隆 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00242082)
|
Keywords | 加齢 / 記憶 / 学習 / 物体認識試験 / 位置認識試験 / メラトニン / マウス / 酸化ストレス |
Research Abstract |
2010年度に引き続き2011年度も中年期(11ヵ月齢)からの8ヵ月間、飲み水にメラトニンを混ぜて与え続けた群と与えなかった対照群の老年期マウスについて、物体認識試験および位置認識試験を行って学習・記憶能力の評価を行い、どちらの試験においてもメラトニン投与群の方が学習・記憶能力が高いことが確認された。2011年度はさらに若年期(8週齢)および中年期の無処置群についても物体認識試験および位置認識試験を行い、中年期より若年期のマウスの方が学習・記憶能力が高く、老年期のメラトニン投与群、対照群のどちらよりも中年期のマウスの方が学習・記憶能力が高いことを示すデータが蓄積された(十分な個体数を得るためにこの実験は2012年度も継続する)。このことは、物体認識記憶、空間記憶のどちらにおいても、中年期からメラトニンを長期投与しても加齢による学習・記憶能力の低下は進行するが、メラトニンの長期投与によってその進行をある程度は抑制できることを示唆している。2011年度はまた、酸化ストレスの指標となる8-OHdGを、若年期および中年期の無処置群、老年期のメラトニン投与群および対照群のマウスの海馬において免疫組織学的手法によって調べた。その結果、若年期よりも中年期、また中年期よりも老年期の両群のマウスの脳の方が8-OHdGの量が多かったが、老年期の両群間の比較では、メラトニン投与群より対照群の方が8-OHdGの量が多い傾向があった。従って中年期以降のメラトニン投与によって加齢による8-OHdGの増加が抑制されると考えられる。これらの実験結果により、メラトニンは、その抗酸化作用によって加齢による学習・記憶能力を抑制する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物体認識試験および位置認識試験を行って学習・記憶能力の評価を行い、まだ個体数は不十分であるが、我々の予想通り、加齢による記憶力の低下と、それに対するメラトニンの抑制効果を示す結果が得られた。また、脳の酸化ストレスの指標となる8-OHdGの量を免疫組織学的方法によって調べる実験においても、我々の予想通り、加齢による増加と、それに対するメラトニンの抑制効果が示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初は8-OHdGなどの脳の酸化ストレスの指標となる物質について、生化学的な方法での測定を予定していたが、様々な困難があり免疫組織学的な方法によって測定することに変更した。今後は同様の方法で脳における老化のもうひとつの指標であるアミロイドβの蓄積を調べる予定である。また、加齢やメラトニンが海馬におけるニューロンの長期増強にどのような影響を与えるのかについても検討する。
|