2011 Fiscal Year Annual Research Report
能動的音楽療法による高齢者の口腔機能向上効果に関する疫学的研究
Project/Area Number |
22500688
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
三浦 宏子 国立保健医療科学院, 統括研究官 (10183625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守屋 信吾 国立保健医療科学院, 生涯健康研究部, 上席主任研究官 (70344520)
原 修一 九州保健福祉大学, 保健科学部, 准教授 (40435194)
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Keywords | 加齢・老化 / 口腔機能 / 能動的音楽療法 / 音声分析 / 健康関連QOL / 摂食・嚥下 |
Research Abstract |
目的:能動的音楽療法は、簡単に実施できるプログラムとして捉えられることが多いが、単なる歌唱のみのプログラムでは口腔機能の向上をもたらすことは難しいものと考えられる。また、歌唱の実施状況と健康関連QOLとの関係は十分に明らかにされていない。本研究は、地域在住の健常高齢者を対象とした横断研究により、歌唱のみを実施している高齢者における口腔機能と健康関連QOLへの影響を調べた。 方法:対象者は、宮崎県北部地域在住の健常高齢者212名(男性86名、女性128名、平均年齢71.9歳)である。歌唱プログラムの実施状況ならびに健康関連QOと指標SF-8と活力度指標については自記式質問紙によって調べた。また、発声機能の指標であるMPTと舌の可動性、摂食嚥下機能の代表的なスクリーニング評価方法であるRSSTと水飲みテストについては歯科医師と言語聴覚士による調査を行った。これらの結果を元にし、歌唱の実施状況との口腔機能との関連性ならびに健康関連QOLとの関連性について、2変量解析と多変量解析にて検証した。 結果・考察:2変量解析の結果、歌唱プログラム実施群では、精神的健康にかかわるQOLスコアが有意に高いことが明らかになった。特に、「気分・意欲」や「活力・社会参加」に係るスコアが、歌唱プログラム実施者では高かった。一方、実施状況と口腔機能向上との関連性は、口唇を引く機能のみと有意な関連性が認められたが、摂食・嚥下機能評価との間には有意な関連性は認められなかった。これらの結果より、歌唱のみのプログラムでは口腔機能に与える影響は限局的であり、他の機能向上プログラムとの併用が必要であると考えられた。また、歌唱プログラムは身体的健康よりも精神的健康に対して、より密接な関連性を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、フィールド調査準備に若干時間を要したため、やや研究のペースが遅れ気味であったが、2年次の平成23年度については、調査地域との協力体制も円滑に構築でき、当初の予定どおり研究事業を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の調査結果より、歌唱のみから構成される能動的音楽療法においては、精神的健康状態の向上には寄与するが、口腔機能向上効果は限局的であることが示唆されたため、次年度は能動的音楽療法の要素を生かした複合型の口腔機能向上プログラムを構築することを目指す。複合型プログラムの開発により、能動的音楽療法が有している精神的・社会的健康への効果を保ちつつ、機能面での効果向上を図る。
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Research Products
(7 results)