2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500710
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中村 和吉 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60270930)
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Keywords | 表面・界面物性 / 界面活性剤 / 表面吸着現象 |
Research Abstract |
教科書や一般の書籍などにおける衣類の洗浄モデルや柔軟剤吸着モデルでは、洗剤の主成分である界面活性剤が親水性表面には親水基が、疎水性表面には疎水基が単分子層を形成しているとされている。しかし前者のケースでは疎水基が水中に露出することになり熱力学的に不安定なため、実際にこのモデルのようになっているとは考えにくい。本研究では親水性表面・疎水性表面における界面活性剤分子の吸着現象について表面張力、一回反射型FT/IR分析、水晶振動子微量質量分析(QCM)等の界面科学的手法を用いて、合理的な吸着挙動を推定する。 本年度は昨年度から継続して、界面活性剤には陽イオン、陰イオン、非イオンを、親水性基質には酸化チタン、疎水性基質にタルクを用いた。界面活性剤水溶液/基質-分散系のcmc測定、および分散系遠心沈降物のFT/IR測定の結果から、界面活性剤の種類に関係なく表面吸着性の強さは、疎水性表面>>親水性表面であることが示唆された。QCMによる吸着量の直接測定結果でも、前述同様の結果が得られた。またQCM測定結果から吸着量を概算すると、疎水性表面には多層(あるいは複数のミセルが集結している)で、親水性表面には単層以下で界面活性剤分子が吸着している可能性が示唆された。これに加えて本年度からは、衣類柔軟剤主成分である二本鎖型陽イオン界面活性剤を用い、柔軟剤の繊維表面への吸着形態についても調査を開始し、従来とは異なる見解を得ることができた。 本研究結果は2つの論文が現在投稿・改訂中であり、続報として1つが投稿準備中である。本研究で得られた知見は既知の概念とは異なっているため、厳しい査読意見に対応するべく追試や再試等に時間を多く取られているが、これと並行して今後多くの検証行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の「概要」でも言及しているが投稿論文に対する審査意見への回答(データの再検討、追試および指定文献の調査・検討等)に時間を割かれ、研究の進捗に遅れが生じている。また、分析機器(FT/IR)の不調もありこれの改修にも時間を費やした(機器については改修・再調整が完了している)。
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Strategy for Future Research Activity |
・本研究課題については大筋では当初計画の通り進行する。 ・調査内容に「基質表面のゼータ電位評価」を追加する。 ・進捗の遅れを取り戻せるよう、24年度は本研究のエフォートを増加させて対応する。 ・二本鎖型陽イオン界面活性剤の繊維表面への吸着調査については、本研究課題の一環として進行する。
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