2011 Fiscal Year Annual Research Report
弾力性低下を引き起こす紫外線の作用波長の研究と紫外線遮蔽効果の新評価法の開発
Project/Area Number |
22500724
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
前田 憲寿 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (50454137)
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Keywords | 紫外線障害 / 皮膚障害 / 放射線 / 光老化 / 紫外線遮蔽 |
Research Abstract |
皮膚のコラーゲンは代謝回転が遅いので、太陽光線に含まれる紫外線による障害が蓄積されやすいと考えられる。紫外線をコラーゲン線維モデルに照射して、弾力性を評価する実験系を用いて、弾力性低下を引き起こす作用スペクトルの解析研究を行った結果、ある波長にコラーゲン線維モデルの弾力性を低下させ、皮膚を硬くする作用があることがわかった。平成23年度は、紫外線照射によるコラーゲン線維モデルの弾力性の低下と架橋物質の量の増加に関係があるかを調べた。まず、紫外線を照射したコラーゲン線維モデルと未照射のコラーゲン線維モデルの励起・蛍光強度スペクトルを測定した結果、紫外線照射によってコラーゲン線維モデルの蛍光強度が増加することがわかった。この結果は長期間紫外線を照射したマウスの皮膚のコラーゲンの蛍光強度と同様のスペクトル特性を示した。次に、紫外線を照射したコラーゲン線維モデルを酢酸可溶性コラーゲンと酢酸不溶性コラーゲンに分け、それらの蛍光強度を測定した結果、酢酸不溶性コラーゲンの蛍光強度が著しく高かった。さらに塩酸で加水分解後、高速液体クロマトグラフィーで蛍光強度を測定した結果、酢酸不溶性コラーゲンではジチロシンが増加していることがわかった。 本研究により、コラーゲンゲルに、紫外線を照射した時に起こるコラーゲン硬化メカニズムに、ジチロシンが関与していると考えられた。コラーゲン線維中のチロシン同士が結合してジチロシンが生じることが報告されている。ジチロシンは紫外線、放射線、過酸化水素、ペルオキシダーゼによりチロシルラジカルを中間体として形成される。皮膚のコラーゲンは代謝回転が遅く、一度形成された架橋は蓄積するので、紫外線によってジチロシンがコラーゲン線維中に形成された場合、線維芽細胞の増殖や機能に影響を与え続けると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に問題もなく、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
各波長の紫外線を照射したコラーゲンゲルでヒト真皮線維芽細胞を培養した際の線維芽細胞の様子(接着・形態・増殖・細胞死等)を観察・測定する。また、紫外線がコラーゲンゲルにどのような影響(変性等)を与えた結果、線維芽細胞の様子が変化したかを考察するための実験を行う。
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