Research Abstract |
本研究は,高齢化社会を快適に過ごすために,臭いが吸着しやすい繊維製品に消臭・抗菌機能を持たせ,かつ実用面から各種の色を有し,堅ろう性の高い消臭・抗菌機能染色布の開発と,ガスクロマトグラフ(GC)法による消臭機構の解明を目的とする.本年度は,検知管法による消臭、試験と,購入した炎光光度検出器(FPD)とGCsolutionを装着した島津製GCによる消臭機構解明を行った.得られた結果を下記に報告する. オムツ,生理用品に使用されている不織布(綿100%)をこれまで用いてきたC.I.Reactive Blue 237の他,3種の反応染料と銅塩で媒染染色し,臭い物質のエタンチオール,アンモニアに対する消臭性をガス検知管法により調べ,染料の種類,染料濃度(1,5,10%o.w.f,媒染条件(先媒染,後媒染)の影響を検討した.いずれの臭いに対しても,染料濃度が高くなると,また,後媒染を加えると,消臭性は増加した.特に,アンモニアに対する消臭性は顕著であり,最も消臭性が高い媒染布で,20分で消臭率100%を示した.含銅量が大きいためである.綿には銅イオンが吸着しにくいため,浸染で行うには後媒染が有効であると考えられる.一方,直接染料C.I.Direct Red 28(Congo Red)と銅塩で綿布を媒染染色し,ガス検知管法でエタンチオールの消臭性を調べるとともに,GC法でその消臭機構を追跡した.消臭開始後,エタンチオールは減少し,ジエチルジスルフィドの生成と,エタンチオールまたはジエチルジスルフィドの布への吸着が起こった.白布や染色布にはこのような挙動は認められなかったため,消臭には銅が関与していると考えられる.消臭性に対する銅の影響は大きく,今後,環境,人に配慮した媒染剤の使用方法を検討することが求められる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
消臭・抗菌機能布の開発に関しては,シルケット加工メリヤス綿布に加えて,オムツやナプキンに使用されている不織布に反応染料と銅塩で媒染染色を行い,臭い物質として用いたエタンチオールやアンモニアに対し,消臭効果の高い条件を求めることができた. ガスクロマトグラフによる消臭機構の解明については,臭い物質として用いたエタンチオールの消臭過程の検討方法を概ね確立することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
消臭・抗菌機能布の開発に関しては,臭い物質の種類を追加し,カテキン等植物由来の抽出液を用いた媒染染色布を調製し,天然素材による肌にやさしい消臭機能布の開発に力を入れる. ガスクロマトグラフによる消臭機構の解明については,直接染料と各種金属塩で媒染染色した綿布等のエタンチオールに対する消臭性をガスクロマトグラフ法で追跡し,エタンチオールの吸着・分解挙動を速度論を用いて解析する.
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