2010 Fiscal Year Annual Research Report
発芽法による低アレルゲン性食品の調製と食味に関する研究
Project/Area Number |
22500730
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
前田 智子 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (00346298)
|
Keywords | アマランス / ソバ / 発芽 / 低アレルゲン性 / アミノ酸 / ギャバ / 小麦 / 抗酸化性 |
Research Abstract |
穀物は我々の食生活の主食となるものであり、ソバも古来から日本人が喫食してきたもので、近年、栄養価と機能性物質の含有量の高さから、各種加工食品への利用が奨励されつつある。特にそれは小麦と共存して使用されることが多い。一方、アマランスはその優れた栄養価が注目され栄養補助食品としても利用が期待されている。我々日本人は米を主食としてきたが、食生活の欧風化、生活スタイルの多様化と共に米の消費量は確実に減少し、パン、うどん、パスタ、ラーメン等の小麦粉製品の摂取が着実に増えつつある。また、小麦粉はこのような米に替わる主食的な製品だけではなく、カレー、揚げ物等のレトルトや冷凍食品およびケーキ、菓子等の嗜好食品への加工にも幅広く用いられており、我々の食生活を支える最も重要な食品素材といえる。本研究では、優れた加工特性を持つ小麦粉のアレルギーに苦しむ患者に対応できる穀物として、ソバやアマランスに着目し、これらの機能性を生かした低アレルゲン性穀物とその加工品の開発を目指した。特に、食物アレルギーを医学的観点ではなく、食品科学的観点から捉え、食品としての価値(味・テクスチャー・食感・保存性)を最も重要なポイントとした。一般に、穀物の低アレルゲン化には、酵素分解、アルカリ処理、高圧処理などが知られているが、処理過程で生じる新たな物質の出現により、加工特性や味の低下も懸念されている。そこで、本研究では味・テクスチャーにこだわった最終製品の開発を目指し、添加物等を使用しない「発芽処理」により低アレルゲン化穀物を調製し、これらの性質を調べた。その結果、アマランスでは、発芽処理によりその蛋白質、アミノ酸、脂肪酸、食物繊維、機能性物質等と抗酸化性に増加が見られた。特に必須アミノ酸であるリジンの増加は顕著であり、それは発芽72時間後に0時間(無発芽)の24倍となった。一方、ソバについても発芽によりギャバやグリシン、リジン等の増加が見られ、それに伴い、総遊離アミノ酸量も増加した。更に、ソバのアレルゲン蛋白質は分解され、低アレルゲン性を示すソバ粉を得ることが出来た。従って、アマランスとソバへの発芽処理は、その機能性や栄養特性を改善し、低アレルゲン性をもたらす有効な手法であると示唆された。
|