2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500753
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
河合 崇行 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品機能研究領域, 主任研究員 (50425550)
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Keywords | 苦味寛容 / 行動学 / マウス / 苦味経験 / 胎生期 |
Research Abstract |
出産4日前、あるいは1週間前に羊水内へ苦味成分を注入した仔マウスと、対照マウスに対して苦味溶液と水との二瓶選択試験を行った。安息香酸デナトニウム注入群の1nM安息香酸デナトニウム溶液のPreference値は0.20、対照群のPreference値は0.21、シクロヘキシミド注入群の0.0001mg/mLシクロヘキシミド溶液のPreference値は0.36、対照群のPreference値は0.47で、いずれの苦味に関しても羊水への注入の影響は認められなかった。また、乳児期から離乳期において、飲料水に安息香酸デナトニウムを加え、苦味経験させたマウスについても苦味溶液と水との、二瓶選択試験を行ったところ、Preference値は0.20となり、羊水への注入群、対照群と差が認められなかった。このことから、苦味単独溶液で、苦味寛容度を調べることは困難であると考えた。 実際、我々人間の場合も、苦いものに対する嫌悪感がなくなっても苦味単独を好んで摂ることはない。そこで、甘味やうま味と共存させ、その中での苦味部分への嫌悪を調べることにした。まず、対照マウスを用いて、甘味、うま味と苦味の組み合わせの適切な混合比をリック解析法を用いて検討した。これは溶液の味嗜好性がリック回数と相関するという実験動物の習性を利用した方法である。種々の濃度の苦味溶液のリック回数とそれらに甘味、うま味を添加したもののリックス回数を比較し、苦味のマスキング効果を定量化した。その結果、甘味として4%スクロースを添加した場合は56%、2.5mサッカリンを添加した場合は47%のマスキング効果が、うま味として500mMグルタミン酸ナトリウムを添加した場合は69%のマスキング効果が認められた。羊水への苦味注入群、乳児離乳期苦味経験群のリック解析を24年度に行い、これらの結果を比較検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は羊水内への苦味溶液注入技術向上を進めつつ、これらの苦味に対する嫌悪感低減を出生後のマウスで認められるかどうかを解析することが目的であった。実際に苦味溶液を羊水注入して得られたマウス、授乳期から離乳期にむけて苦味溶液を経験したマウスを用いて、苦味溶液と水との48時間二瓶選択実験を行った。結果は、仮説通りにはならなかったが、それにより、苦味単体に対する嫌悪感の低減は起こらないであろうという結論を得た。24年度には苦味+うま味、苦味+甘味などの複合溶液に対する苦味嫌悪感低減を調べる予定であり、そのための準備として、通常マウスの苦味複合溶液に対する行動特性を23年度中に調べ、概ね条件がそろった。
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Strategy for Future Research Activity |
c57BL/6系統マウスを用いた研究により得られたマウスの苦味に関する行動特性を元に、比較的交配能力の高いICR系マウスの苦味に関する行動特性を調べる。さらに、ICR系マウスの胎生期苦味経験マウスと対照マウス、乳児期苦味経験マウス・離乳期苦味経験マウスにおける苦味に対する嗜好を動物行動学に基づき解析・比較する。苦味に対する嗜好や嫌悪感低減が、胎生期の母親の食事によって変化しうる可能性があるかどうか検討する。苦味に直接作用しない甘味やうま味などの栄養成分を添加し、苦味に対する嫌悪感低減率が苦味経験マウスと対照マウスで異なるのかどうかを検討する。これらの実験結果を総括し、どの時期に苦味を経験し、苦味をどのように処理するのが将来の苦味忌避を緩和するのに適しているかを推察する。
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