2011 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシンドローム予防食品成分の評価法の確立とその応用
Project/Area Number |
22500757
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
小城 勝相 放送大学, 教養学部, 教授 (10108988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市 育代 お茶の水女子大学, 生活科学部, 講師 (50403316)
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Keywords | メタボリックシンドローム / 酸化ストレス / 糖尿病 |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームは動脈硬化症を促進することにより心臓・脳血管障害を引き起こすとされている。メタボリックシンドロームの中でもインスリン抵抗性、即ち糖尿病は酸化ストレスを亢進させることが我々の過去の研究を含めて分かっている。我々は以前に、化学物質の肝炎をモデルとして、酸化ストレスが亢進すると血液中にセラミドという細胞死を引き起こす脂質が増加することを報告し、劇症肝炎における多臓器不全にセラミドが関与する可能性を提唱した。今年度は申請書に記載した研究目的と研究実施計画の通り、糖尿病を取り上げその合併症の発症にセラミドが関与する可能性を検討した。 ストレプトゾトシン(STZ>投与により糖尿病にしたラットにおけるセラミド量の測定をLC-MS/MSを用いて行った。 STZ投与2週間後(2w)を糖尿病初期,8週間後(8w)を進行期とした。STZ投与2wで,肝臓,腎臓のビタミンC(C)はすでに有意に減少し,酸化ストレスの亢進を認めた。8wではCはさらに減少し,血漿でも有意に減少したことから,糖尿病進行期において酸化ストレスはさらに亢進することがわかった。セラミドについては,肝臓では糖尿病による増加はなかったが,腎臓では2wにおいて糖尿病群で有意に高く,8wにはさらに有意に増加した。8wでは血中尿素窒素(BUN)も有意に上昇し,腎障害が起きていることを示した。血漿中では8wでセラミドの有意な上昇を認めた。 セラミドはde novo合成系,スフィンゴミエリナーゼ(SMase)サイクルの2種類の経路で主に合成される。SMaseは現在確認されているもので5種類存在し,酸性(aSMase),nSMase,アルカリ性や分泌型(sSMase)というように,至適pHや局在によって分類されている。以前我々が検討した四塩化炭素中毒においては2hですでにnSMaseが活性化していた。このことからnSMaseは極めて鋭敏に酸化ストレスに対応していることがわかった。この点について,Filostoらは,興味深い報告をしている。nSMase2(nSMaseファミリーのうち、最も酵素活性が高いと考えられているもの)は,セリンのリン酸化により活性が上昇するが,カルシニューリン(PP2B:プロテインホスファターゼ)と結合しているため,通常状態ではそのリン酸化が阻害されて活性が低い状態で存在している。しかし酸化ストレスが惹起されることよってPP2Bが迅速に分解される機構が働くため,nSMase2のセリンのリン酸化状態が維持されることになり活性化されるというものである。そこで本研究でも,腎臓,肝臓の各種SMase活性の測定を行ったが,セラミドの変化と対応しなかった。血漿中に唯一存在するSMaseであるsSMase活性を測定すると,STZ投与2,8w両方で対照群より有意に活性が上昇していることが明らかになった。以上より、食品成分の中でもSMaseを阻害する成分があれば糖尿病の合併症を予防することが期待され、新たな食品成分や医薬品の開発につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り研究を実施し、論文を英国化学会の国際雑誌に発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り、メタボリックシンドロームとその食生活による予防についての基礎的な研究を行っていく。
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Research Products
(9 results)