2011 Fiscal Year Annual Research Report
β-カロテンの経口摂取によるウイルス感染症対策を志向する基礎研究
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22500761
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山西 倫太郎 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30253206)
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Keywords | 食品 / 適応免疫 / β-カロテン / グルタチオン / 抗原提示細胞 |
Research Abstract |
マウスに高ビタミンEとともにβ-カロテンを摂取させた場合には、抗原投与により誘導されるIgE抗体の産生が低下し、脾細胞のグルタチオン(GSH)量を増加させ、さらに、1型ヘルパーT細胞(Th1)活性を亢進させる。本研究では、β-カロテンが免疫システムの中の抗原呈示機能に影響を及ぼした結果としてTh1亢進(:Th2抑制)に寄与するのではないかとの仮説を立て、それを検証するための実験を企画した。当初予定していたマウスに対する投与実験では効果が見られず、予想外の結果となってしまったが、これは飼育室の空調システムの不調により、マウスにストレスが生じたためと思われる。施設的な問題が生じたため、当初の目的であるβ-カロテンの免疫システムへの影響を検討するため、別途、培養細胞を用いて種々の実験を行った。その結果、β-カロテンを培地に添加すると、マクロファージの細胞内の抗酸化物質GSH量が増加した。過去にHPLCを用いた測定法により、還元型ならびに酸化型GSH量の両方が増加することを報告しているので、今回はより簡便な酵素法を用いて総GSH量(還元型と酸化型の総和)を測定したが、今回用いた測定法においても、β-カロテンによるマクロファージの細胞内総GSH量増加効果に対する裏付けをとることができた。また、GSH合成の律速酵素であるグルタミン酸シメテインリガーゼの阻害剤であるブチオニンスルフォキシミンを培地に添加した場合には、β-カロテンによる細胞内GSH増加効果が消失するという結果が得られた。このことから、β-カロテンがグルタミン酸システインリガーゼ活性の関与の下で、GSH量の増加をもたらしていることが明らかとなった。次年度は、この酵素の発現調節に関するβ-カロテンの動果について検討したいと考えている,またく時間と予算面での余裕があればマウスへの投与による抗原提示機能への影響についても引き続き検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた実験により、β-カロテンが、他の分子(グルタミン酸システインリガーゼ)への影響を介して間接的に紳胞内のレドックス状態に影響を与えることを明らかにした。β-カロテンについては、その分子自体の直接的レドックス作用(抗酸化作用)が広く知られており、間接的な作用については一般的ではない。申請者の知る限りでは、免疫細胞における報告はない。このように、科学的に新規の知見を得ることができた点で大変意義深い。一方で、マウメを用いた研究は、予定通りの進捗具合ではないので、この点を割引き、上から2番目の評価に留めた。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞実験を中心として研究を継続し、β-カロテンがマクロファージ細胞内でのグルタミン酸システインリガーゼ(GCL)に及ぼす影響の解明に努めたい。具体的には、GCLを構成する二つのサブユニット(触媒サブユニット・調節サブユニット)をコードするDNAからmRNAへの転写の段階、mRNAの安定化などmRNAからたんぱく質への翻訳の段階、あるいは産生されたサブユニットの翻訳後調節の段階のうち、いずれを作用点とするのかを見極めたいと考えている。マウスを用いた実験では、種々の実験食を経口摂取したマウスから採取した脾臓由来の抗原提示細胞を用いて、β-カロテンが抗原提示量に及ぼす影響を検討したいと考えている。
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