2011 Fiscal Year Annual Research Report
フルクトース誘発高血圧における腸管でのクロライド吸収の役割の解明
Project/Area Number |
22500764
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
林 久由 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 講師 (40238118)
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Keywords | 栄養学 / 食品 / 高血圧 / 生理学 |
Research Abstract |
前年度の研究ではフルクトース摂取によりラット腸管からのクロライド吸収の大きな変化は観察さなかった。このため更に詳細に検討するためフルクトース摂取により腸管のイオン輸送体並びにその関連タンパク質が変化するか否かを網羅的に検討するためにマイクロアレイによる発現解析を行った。しかし、フルクトース摂取により、マウス小腸のCl^-並びにNa^+輸送関連蛋白の発現はコントロール食群と比較して大きな変化は観察されなかった。しかしCl^-は下部消化管(盲腸、大腸)でも吸収されていることが示されており、何らかの機構を介して大腸での吸収機構が変化していることが考えられた。しかし、大腸各部位でのCl^-吸収を担っている分子の実体やCl^-吸収機構は詳細には検討されていない。このため主要なCl^-吸収担体だと考えられているSLC26A3のノックアウトマウスを用いて大腸各部位でのCl^-機構を検討し、またSLC26A3とNa^+吸収の関係も検討を行った。その結果SLC26A3は、盲腸並びに、中位、遠位大腸では主要なCl^-吸収担体であった。しかし大腸近位部ではCl^-吸収は観察されなかった。また消化管ではCl^-吸収輸送体はNa^+輸送体と機能的に共役して、NaCl溶液として腸管から吸収されていると考えられているが、その共役機構は、盲腸と中位部大腸では異なることが示された(論文準備中)。またCl^-吸収輸送体であるSLC26A3の細胞発現系を用いてSLC26A3の糖鎖の役割を検討した。糖鎖を除去すると細胞膜上のべの発現が低下し、糖鎖は膜への発現に重要な役割をしていることが示唆された。また糖鎖除去されたSLC26A3は蛋白分解酵素であるトリプシンで分解されやすくなり、消化管内では糖鎖により蛋白分解酵素からSLC26A3は分解を免れることにより、Cl^-を吸収が円滑に行われていることが示唆された(AJP,2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的はフルクトースによる腸管からのNaCl液吸収の亢進の機序の解明であったが、過去の実験の追試を行ったが液吸収の亢進は観察されなかった。しかし、大腸でのCl^-吸収機構にはSLC26A3が主要な役割をしており、またNaCl吸収機構の部位差があることが明らかにできた。更にCl^-吸収輸送体であるSLC26A3の糖鎖は、消化管内でSLC26A3を蛋白分解酵素から保護している可能性が示唆された。 以上の二つの研究より消化管でのCl^-吸収のより詳細な機構が明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管でのCl^-吸収機構を腸管各部位で更に詳細に検討するため、少量のCl^-をより再現性よく定量的に測定できる様に方法を改善する必要がある。このため本年度はラジオアイソトープである^<36>Cl^-またはCl^-高感受性の電極を用いて、腸管各部位でのCl^-の吸収・分泌速度を測定し、それに対し栄養素がどのように相互作用するのか検討し、本来の目的であった栄養素と電解質吸収の関係をあきらかにする。
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