Research Abstract |
本研究の目的は,学校の理科授業で敬遠されがちな生物の長期観察を支援する試みとして,遠隔制御型植物育成システム「アイテラリウム」を利用して,その教育的効果を検証しようとするものである。アイテラリウムは,インターネットを通じて,日照,温度,土壌水分含量などを自由に制御でき,かつウエブカメラを装備していることから,携帯電話等から遠隔操作で管理,画像の撮影,蓄積などが容易にでき,理科授業の新たな一手法として,その試みは価値が高いと考えられる。 今年度は,昨年度に引き続いて,アイテラリウムを利用した植物に関する理科実験の検討として,ファストプランツを用いた植物の要素欠除試験に取り組んだ。大学において,N,P,K,Ca,Mg,Feなどを欠いた培養液を用いファストプランツを水耕栽培し,植物体にどのような症状が現れるのかを遠隔操作によって経時的に観察し,記録を取った。その結果,昨年度と同様の結果が得られ,本システムを利用しての理科実験プログラムの有効性が確認できた。この成果は,昨年度の結果と合わせて,日本理科教育学会の「理科教育学研究」に投稿し受理された。 更に,今年度は高等学校生物の教科書に必ず掲載されている,植物の日長(短日・長日処理)に関する実験をアサガオを用いて行い,本システムを利用することによって,短日処理の効果を容易に確認することができた。 また,大学生にICT機器と生物の長期観察に関する意識調査を行い,将来,教員志望の学生の意識を探った。アンケート調査の結果を因子分析した結果,「動植物の育成への興味・関心」,「理科の授業においてのICT機器の活用」,「理科においての栽培・飼育の重要性」,「生物育成システムの有効性」の4つの因子を抽出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,アイテラリウムを利用して,植物のみならず小動物(昆虫)の長期飼育の実験を行う予定であったが,植物だけの実験を行うにとどまり,小動物の長期飼育には至らなかった。しかしながら,24年度に計画していた生物の長期観察に関する意識調査を,今年度,大学生に対して行うことができた。そのため,ICT機器を生物の長期栽培・飼育に用いる際の意識を探ることができ,当初の予定は,おおむね達成できていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,数種類の生物を長期的に栽培・飼育したことで,アイテラリウムを教育現場で活用する可能性が示唆された。そこで,最終年度である24年は,中学生や高校生を対象として,大学に設置したアイテラリウムを使用して,遠隔栽培を実施し,本実験システムと作成した授業プログラムの有効性を検証する。
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