2011 Fiscal Year Annual Research Report
技能者の経験的知識の形式化による「気づき」を促す機械設計技術者教育
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22500832
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
山口 顕司 米子工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10220261)
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Keywords | 工学教育 / 暗黙知 / 形式知 / 技能教育 / 機械設計教育 / 機械工作 / 設計製図 |
Research Abstract |
学生が自分自身の持つ技能や技能に対する視点を認識し,それが熟練技能者の考え方とどのように違うかを自己発見できる知識データベース構築の基礎として,平成22年度に行った基礎的な機械部品製作プロセスの分析から更に進んで,より熟練技能が必要とされるような機械部品について,その製作プロセスをそれぞれの技能レベルごとに調査分析した.平成23年度は特に,技能五輪全国大会での入賞経験をもち,かつ継続的に15年以上にわたって企業での実務経験をもつ国内でトップクラスといえる熟練技能者の協力を得て実験を行った.その結果,旋盤作業図面読解時の視線の動きおよび視線集中領域の解析,工程を検討する際の思考過程の記録,旋盤技能検定3級作業の記録および作業中の思考プロセスの分析などにより熟練技能者による旋盤作業のデータを得ることができた.次に,主として学生について多数の実験を行って,昨年得られた熟練者と初心者の観点の違いに関する仮説をある程度検証することができた.また,熟練技能者の思考過程,作業過程などを学生および初心技能者に理解させるために,特に勘所となるような部分を視線解析およびインタビューなどによって抽出して明示化した.これらの内容には,技能者が経験的に獲得した知識が含まれており,学生に熟練技能者の考え方に対する「気づき」を与えるのに有効であった.また,旋盤作業だけでなくフライス盤作業なども含む複合的な部品の製作過程についても主に中堅技能者,初心者,学生などを中心として同様の実験を行いデータを蓄積した.これらに加えて,作業者の動作をモーションキャプチャーによって解析することを考え,そのシステムの構築を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった,熟練技能者が持つ経験的暗黙知を分析し,作業上重要となる点や技能者の視点観点などを初心技能者や学生に明示化して示す手法を提案し,その妥当性の検討を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに提唱した手法に加えて,モーションキャプチャーによって作業者の動きを解析する方法を導入し,技能レベルによる機械部品の図面読解プロセスおよび製作プロセスの違いを体系化する手法を確立する.また,その結果を機械設計・製図教育に反映させる手法を検討し,高等専門学校における機械設計・製図の授業への導入と教育効果の検証を試みる.これらの実現にあたっては,学生が技能者の視点・観点といったことを自ら「気づき」,それらを設計に組み入れていけるような具体的手順や方法を開発する必要があるが,この点が現時点における本研究の課題である.
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