2010 Fiscal Year Annual Research Report
科学的方法論を主題とした理系学生の教育プログラム構築
Project/Area Number |
22500837
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松王 政浩 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (60333499)
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Keywords | 科学基礎教育 / 科学哲学 / 科学者の説明責任 |
Research Abstract |
本研究は、理系の学生が将来科学・技術に携わる中で、社会に対する説明責任をきちんと果たすべく、自らの拠る科学的方法の妥当性について、より自覚的かつ客観的な視点をとれるよう支援する教育プログラムの構築を目的とする。今年度の研究実績は、以下のとおりである。 1.北大理学院科学基礎論研究室の学生とともに、科学哲学系学術誌『科学哲学』(PSA)および『ブリティッシュ・ジャーナル』(BJPS)を中心に、科学的仮説の選択に特に関わりが深い確率・統計の哲学について、主要な論文(ベイズ主義、頻度主義、尤度主義と、AICなどモデル選択に関わる論文)をサーベイし、教育上有益と考えられるポイントを洗い出した。 2.研究代表者・松王は、科学的仮説選択に伴う帰納的リスクの問題(仮説選択の誤りをいかに避けるか)をめぐる最近の英米の議論、特にヘザー・ダグラスによる価値の線引きに関する示唆的な議論(科学者と価値との関わりを「直接的」「間接的」に区分しその適切な役割を問う議論)に注目し、これが科学および科学コミュニケーション教育にどのような形で応用可能かという、ダグラス自身が言及していない新たな視点での検討を行った。そしてこの成果を、「科学社会論学会」(4S)において口頭発表した。 3.カンザス州立大学哲学部のブルース・グリマー教授の協力の下、同地でSGSメソッド(1990年代から発展した統計的因果推論に関する画期的な理論)に基づく科学基礎教育の特別講義を実施し、北大理学院生を参加させた。授業後、科学哲学の教育的応用について活発な議論を行い、SGSメソッドの原理的問題、および物理学などの具体的な科学の方法論との接点に関する見通し(たとえば物理学における統計的な発見的因果推論の効用など)を得た。
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Research Products
(2 results)