2011 Fiscal Year Annual Research Report
全盲学生にフォトグラフィーを応用した触図教材による微生物学教育に関する研究
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22500842
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
一幡 良利 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70090115)
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Keywords | 全盲学生 / 微生物学教育 / 触図 / フォトグラフィー / 常在微生物叢 / コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 / 細菌形態 / 走査型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
全盲学生の微生物学教育は、触図教材を用いた微生物の発育集落を理解させることにより、一段と進歩した。更にフォトグラフィーを応用した触図では、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌のグラム染色後の形態を容易に識別できるまでになってきている。将来医療の現場で働く場合には感染予防・対策は万全でなければならない。それ故に、微生物学の学生教育は重要となっている。 今回、全盲学生の手のひらから分離された常在細菌のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の形態を3Dリアルサーフェスビュー走査型電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡像の画像処理はパソコンへ取り込んだ後に、花子フォトレタッチを用いた。得られた画像をグレー色へ変換し、最適な濃淡画像を招請し、立体用カプセルペーパーに複写し、動作温度を加えた。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌のブドウ状の形態は膨張し、触覚で感知できるように塊状部分が隆起した。正円形、辺縁スムースな光沢のあるブドウ状の形状で、個々が連なって房状を呈しているのが、触察により観察できた。このとき特徴あるブドウ状形態を示した個所は拡大触図も作成した。触図作成した図形データにより、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の電子顕微鏡レベルでの形態は、触図を常時使用している学生では容易に識別できたが、触図使用経験の浅い学生ではブドウ状集落が何をさすのか判別がやや困難な学生もいた。この学生には、微生物の持つ特徴を説明することにより、電子顕微鏡的形態の意義を理解するようになった。 今回、分離されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の莢膜血清型は最も普遍的なII型であり、メチシリン感受性の常在細菌であった。皮膚常在微生物叢の血清学的特徴や薬剤感受性との関連まで特徴づけて指導することができ、感染予防・対策の重要性を認識できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度計画取りに実験は順調に実行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
微生物形態の触図作成は発育集落、染色形態、走査型電子顕微鏡レベルでの触察技法が有効であった。今後は消毒薬を作用させた微生物の超薄切片像を電子顕微鏡で観察し、微生物の微細構造の変化と作用機序を知ることにより、感染予防・対策の意識は高まり、将来医療従事者としての心構えは万全となる。
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