2011 Fiscal Year Annual Research Report
疑似科学的信念を規定する科学的態度と認知バイアスの研究
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22500850
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
菊池 聡 信州大学, 人文学部, 准教授 (30262679)
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Keywords | 疑似科学 / 批判的思考 / 超常信奉 / コントロール幻想 |
Research Abstract |
本研究は、疑似科学や超常現象に対する信奉を、科学的思考力の不足による非合理信念という視点のみで考えるのではなく、適応を促進する認知的バイアスや科学へのポジティブな態度を反映するものととらえ、それらの関連を質問紙調査と実験的指標を組み合わせて明らかにすることを目的としている。 前年度に行った実験・調査データの解析結果からは、それぞれの測定手法の改良の必要性が示唆されていた。そこで該当年度には新たに高校生672名を対象として調査を実施し、多元的な超常信奉態度尺度の改良と自己奉仕的認知バイアス(ポジティブ・イリュージョン)の測定を行った。その結果は、両者の関連性を強く確認するものであり、この分析結果をもとに論文投稿を準備中である。 加えて、大学生110名を対象として、確率推論における認知アイアスと超常信奉の関連を明らかにする実験を行った。しかし、特徴的なバイアス示す被験者群を十分に分離できなかったため、次年度にさらにデータを補充して分析する予定である。 また、前年度に行った調査・実験のデータを分析し学会報告を行った。大学生を対象とした実験からは「結果の随伴性にかかわるコントロール幻想」と「スピリチュアル信奉」との間に正の関連性が見いだされた。これは一部の超常信奉が、適応的な自己奉仕バイアスの影響下にあることを示している(日本心理学会で報告)。中学生と現職の教員に対して行った質問紙調査データの分析結果から、一部の疑似科学への信奉は中学生ばかりではなく、教える立場にある教員の間にも根強く存在し、場合によっては非常に高いレベルにあることを明らかにした。この結果は、超常信奉が学校教育の中で強化されることがありうるという問題を提起するものであった(日本科学教育学会で報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に掲げた実験と質問紙調査は、いずれも2年間にわたって実施し、当初の仮説を裏付ける結果が得られている。また、これらのデータは実験調査方法の改良と新たな仮説構築の必要性も示唆するものであり、最終年度の調査の中で、十分な検討を行うべき点を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、研究予定に従って中高生および現職教員を対象とした調査を実施するとともに、これまで蓄積されたデータを総合的に再分析して、超常信奉と認知バイアスをめぐる総合的な考察を行い、論文投稿及び批判的思考教育への貢献をめざす図書にまとめて出版する予定である。 その中で、有効な批判的思考教育のあり方を提言するため、先進的な批判的思考教育が行われている海外(主として英国)の事例や教科書について調査も行う予定である。
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