2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500854
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
手塚 美彦 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (80236976)
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Keywords | 科学教育 / 太陽電池 / 工学教育 / 導電性高分子 |
Research Abstract |
使い捨て用途およびエネルギー・環境教育用の教材として使用可能な低コスト太陽電池の作製方法を開発することを目的とし,安価なチオフェンの電解重合によって形成されるポリチオフェンをベースとした有機薄膜太陽電池を作製した.無置換のポリチオフェンは不溶性のため重合後の成形加工は困難であるが,電解重合法により電極上に薄膜として析出させることができる.バッファー層としてPEDOT:PSSをコートしたITO電極上に2.0V(vs.Ag/Ag^+)の定電位を印加してポリチオフェン膜を電解析出させた後,0.0V(vs.Ag/Ag^+)の電圧を印加してポリチオフェン膜を菅完全に脱ドープした.シリコンカンチレバーを用いた原子間力顕微鏡観察により,ポリチオフェン膜表面にはnmオーダーの無数の孔が存在することが明らかとなった.可溶性のフラーレン誘導体であるPCBMのクロロベンゼン溶液をポリチオフェン膜上に滴下し,一定時間静置後にスピンコートし,その上にアルミニウムを真空蒸着して大きさ4mm角のデバイスを作製した.ポリチオフェンの膜厚を最適化することによって,擬似太陽光照射下(AM1.5G,100mW/cm^2)で最大15%のエネルギー変換効率が得られた.この最適化デバイス断面の走査透過電子顕微鏡(STEM)観察およびX線マイクロアナライザー(EDS)分析を行った結果,ポリチオフェン層とPCBM層の間に両者が混ざり合った中間層が形成されていることがわかった.この中間層は,ナノポーラスな表面構造をもつポリチオフェン層内にPCBM溶液が浸透し,溶媒の揮発によってPCBMがポリチオフェン層内部に残留したことによって形成されたと考えられる.これにより両者の間に部分的な相互侵入構造が形成され,単純な積層型デバイスより高いエネルギー変換効率につながったと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安価な電解重合ポリチオフェンを活性層に用いた有機薄膜太陽電池においてエネルギー変換効率1.5%を達成した.この値は当初の目標を上回っている.一方,真空蒸着装置などの大型装置を必要としない太陽電池の組み立て方法の確立について未達成である.
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Strategy for Future Research Activity |
さらなるエネルギー変換効率向上のため,よりポーラスなポリチオフェン膜が形成される電解重合条件を探す.また,活性層と電極とのコンタクト改善のため,低融点合金を用いる方法および有機層同士を接触させる太陽電池の組み立て方法を検討する.
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