2011 Fiscal Year Annual Research Report
疑似科学的広告に対する実用的な科学性評価基準を策定する研究
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22500965
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石川 幹人 明治大学, 情報コミュニケーション部, 教授 (20298045)
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Keywords | 擬似科学 / 科学社会論 / 科学リテラシー / 広告論 / 消費行動 / 科学コミュニケーション / 食品衛生 |
Research Abstract |
前年度は、消費者側の疑似科学広告に関する意識調査を行なったのに対して、当該年度は、広告主側である健康食品や健康機器を製造・販売する業者に対してアンケート調査を行なった。 消費者側とは反対に、業者は消極的な応答であり、2段階合計で215件の依頼送付に対して、回答があったのは、わずかに39件(18%)であった。その内訳は、第1段階のゲルマニウムに関する商品に特化した調査では、100件に対して16件、第2段階のトクホ未取得のサプリメントを広く対象にした調査では、125件に対して23件の回答であった。少数の回答ではあるが、次のことが判明した。 ゲルマニウム商品の調査に関しては、広告主が十分なデータや知識をもっておらず、特定の業者の文献に依存している傾向が少なからず判明した。つまりゲルマニウムの粉末と称する原料を調達して、商品に加工するものの、その作用や機能は調達元の業者の主張に従っているという傾向である。これまで、広告主がもつ科学情報をいかに広告等を通じて消費者に届けるか、それに伴っていかに消費者の科学リテラシーを向上させるかを課題に取り組んできたが、ここで明らかになったことは、業者間の科学情報のやり取りや、業者自体の科学リテラシーの確立にすでに同様な問題がひそんでいるということであった。 サプリメント商品の調査に関しては、広告主の姿勢が多岐にわたった。商品含有成分に対しては流通している以上のデータや知識をもっていない業者から、独自の調査や試験を行なって学会発表している業者までがあった。前年の活動を通してすでに明らかになっていたことでもあるが、景品表示法や健康増進法が広告表示上の規制となって、結果的にこれらの姿勢の差異が現れないようにしてしまっている実情が、あらためて鮮明になった。 これらから、消費者と広告主業者が利用可能な科学性評価基準の策定、およびそれを通じた科学コミュニケーションの場の確立に向けた基盤が整ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
広告主となる業者側の意識調査が、当初予定していたようなメディアからの協力が得られず、やむなくランダム抽出によるアンケート調査になってしまったため、回答率が低かった。しかし、回答者の中には、こちらの構想に賛同して協力を申し出てくれた業者もあり、そこを糸口にして、今後の活動を進めていくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
ホームページに上に、科学性評価基準にもとづいて、消費者と業者が情報交流できる科学コミュニケーション拠点を築くことを目標にしていく。業者側の協力は、上に述べたように限定的となるかもしれないが、協力を申し出てくれた業者を中心に、まずは活動を開始し、じょじょに拡大を図るという方策でのぞんでいく。
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