2011 Fiscal Year Annual Research Report
アイヌ文化の住居建築材にみられる古環境利用の動態研究
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22500973
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
守屋 豊人 北海道大学, 埋蔵文化財調査室, 特定専門職員 (60396273)
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Keywords | アイヌ文化 / 木製品 / 材質分析 / 樹種識別 / 古環境 |
Research Abstract |
平成23年度は、北海道東部の常呂川河口遺跡から出土した木製品(住居建築材含む)の観察・分類や、木製品(特に住居建築材)の一部に対して試料採取・プレパラート作製をして、樹種識別(一部)を実施した。また、その遺跡出土木製品の一部について年代測定をおこない、アイヌ文化の絵画資料(近世)の検討や建築学的観点からの検討をおこなった。 1.常呂川河口遺跡から出土した木製品のうち、木材の直径や木取りや先端加工の回数が建築材を区別する上で有効であるととらえられた。遺跡に残されていたものだけからではあるが、直径15cm以内の杭もしくは柱では丸材の先端に2回もしくは3回の切削が鉄器(手斧など)でおこなわれていると明らかになってきた。 2.建築材として分類される資料のうち、約200点を抽出して樹種識別のためのプレパラート作製や樹種識別(一部)をおこなった。同定作業は途中であるが、広葉樹(コナラ属など)や針葉樹が存在するとわかった。遺跡周辺の旧地形や花粉分析結果に照らし合わせると、遺跡周辺の植生(針広混交林)から素材を入手していたとよりはっきりした。 3.常呂川河口遺跡の木製品から採取した試料の年代測定によって、12世紀~16世紀(擦文時代や中世や近世)にあたる木製品の存在がさらに明らかになった。年代測定した木製品の出土層位を確認すると、木製品の埋没時期は2時期(より下位のものは12世紀、より上位のものは13世紀~16世紀)にわかれると推測された(前年度とあわせ8個体を年代測定した)。 4.北海道大学北方関係資料総合目録を利用して、アイヌ文化(近世)の絵画資料(特に建物が描かれている)を検討途中である。また、杭もしくは柱と考えられる木製品の規模から、建築学的な検討をおこなっている途中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
常呂川河口遺跡出土の木製品は、生木の状態で2001年と2002年に発見され、発見時から現在までの経年がながく、一般的な木製品よりも脆弱な状態で、切片の採取が難しく、プレパラート作製を丁寧に実施しているため、樹種識別実施のためのプレパラート作製が遅れざるを得ない状況であるから。
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Strategy for Future Research Activity |
常呂川河口遺跡出土の木製品について、住居建築材に焦点をより絞り、プレパラート作製および樹種識別を実施する。住居建築材については、約7割のプレパラート作製ができていることから、焦点を絞って実施していき、また、樹種識別については研究代表者と連携研究者の双方でおこなう予定である(樹種識別に際して問題となる試料を選別する対策や、一部、業務委託を検討している)。
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