2011 Fiscal Year Annual Research Report
Ahレセプターを介するβ-カテニン分解および炎症反応の抑制による大腸がん抑制作用
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22501001
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
生田 統悟 埼玉県立がんセンター, 臨床腫瘍研究所, 研究員 (00262072)
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Keywords | Ah レセプター / 大腸がん / 炎症 |
Research Abstract |
AhRが機能する免疫担当細胞の解析 AhRKOマウスでは、腸の炎症が亢進する。また無菌的に飼育されたAhRKOマウスにがんは生じなかったことから、AhRは外部環境に対する生体防御的な役割をもつと考えられる。この役割は、どの細胞によって担われているのだろうか。本年度はAhRが機能する細胞を調べる目的で、免疫担当細胞について検討した。 デキストラン硫酸(DSS)を投与する事により、マウスに大腸炎を誘導した。1%DSSを飲水投与すると、AhRKOマウスでは下痢や血便がみられ、有意な体重の減少が観察された。正常マウスではこのような影響はみられなかった。DSS投与後の炎症性サイトカインは、小腸および結腸に比べて、盲腸で高かった。また盲腸の免疫染色により、マクロファージおよびT細胞が集まっている事が示された。AhRKOマウスはDSSに高感受性であり、組織間で比較すると、盲腸は形態的にも、機能的にもDSSの影響を受けやすい組織であることが示唆された。 大腸がん発生における免疫細胞と腸上皮細胞との相互作用 サイトカインの細胞増殖に与える影響を調べる目的で、生後およそ1週間のマウスの腸から得た細胞をコラーゲンとmatrigelを含む培地中で初代培養した。形成される細胞塊を共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、E-cadherin抗体で認識される腸のクリプト様の構造を形成し、その底部は増殖マーカーであるKi67(+)細胞が配置された。細胞塊の凍結切片を免疫染色すると、Ki67(+)細胞と分化マーカーであるCK20(+)細胞の層は分離されており、培養系においても生体に近い形で上皮細胞の増殖・分化が調節されていることが示された。 この培養系を使って、上皮細胞の増殖を調べた。15万の細胞をまいて5日目の細胞塊の数はおよそ50であった。 1-5ng/ml IL-1βを添加すると、生じる細胞塊の数は20-50%減少する傾向がみられた。しかしながら現段階ではWTとAhRKOの比較は困難であり、さらに実験系を整える必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初代培養はできるようになってきたものの、これを使った増殖のアッセイや、幹細胞マーカーの検出等がまだできていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
AhRノックアウトマウスにおける発がんは、AhRの発現低下と細胞がん化または悪性化との間に密接なつながりがあることを示唆している。大腸がん細胞株を使ってAhRの発現調節について調べる。また、AhRの炎症抑制作用に必要な細胞を検討するため、細胞特異的にAhRがdeleteされているconditional KOマウスを使った解析をおこなう。
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