2011 Fiscal Year Annual Research Report
食品中の発癌物質PhIPによるチェックポイント応答を中心とした発癌初期過程の解析
Project/Area Number |
22501003
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
福田 博政 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (60300943)
|
Keywords | 癌 / 食品 / 核酸 / 変異 / 化学発がん |
Research Abstract |
加熱食品中に含まれる発がん物質ヘテロサイクリックアミン類の中で最も多く存在するPhIPは、ゲノムDNA中のdGと付加体を形成する。この付加体ががん抑制遺伝子・がん遺伝子中にできて変異を引き起こすことが発がんの一因と考えられるが、この遺伝子変異だけではPhIPの発がん性のすべてを説明することは出来ない。PhIP-DNA付加体形成によりDNA損傷チェックポイント応答(DDR)が活性化し、その状況が解消されずに持続すること、或いはDDRが破綻することが、発がんの前段階として極めて重要と考えられる。細胞株・初代培養細胞・ラット個体などを用いて、これを実証することが本研究の目的である。また、DDR以外に活性化される経路があるかどうかについても調べる。昨年度は、ヒト大腸がん細胞株HCT116を用いて、PhIP曝露によるATM/ATR、Chk1/Chk2、p53、H2AX等のDDR関連因子の活性化(リン酸化)やReplication Stress(複製フォーク停止)の指標であるPCNAのモノユビキチン化やRPAのリン酸化を確認したが、今年度はラット正常大腸上皮の初代培養細胞を用いて、同様のDDR活性化を確認した。さらに両細胞を用いた解析から、PhIP曝露によりAktの活性化(Ser473のリン酸化)及びその下流のストレス応答/アポトーシス関連因子FOXOs、Bim、MnSODの活性化(発現量増大)が認められた。p53やH2AXのリン酸化等のDDR活性化にはPhIP添加後4-5時間必要なのに対して、Aktの活性化は20分程度で起こることから、Aktの活性化にはPhIP-DNA付加体の形成は必要ないことが示唆された。DDRの主要な指標の一つであるp53Ser15のリン酸化はPhIPを除いてから1日で消失したのに対して、p53自体の蓄積(安定化)は2-4週間後の時点でも観察され、興味が持たれた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウェスタンブロットや免染等、タンパク質レベルの解析に時間をとられ、染色体レベルの解析にはまだ着手できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、細胞株を用いた実験に続いて、ラット個体を用いた実験も予定していたが、コストと労力の問題からラット大腸正常上皮由来の初代培養細胞を用いた実験に変更した。DDRを主体にした解析を予定していたが、それ以外の経路もPhIP曝露により活性化されることを見いだしたので、もう少し間口を広げて解析を行うことにした。
|
Research Products
(2 results)