2011 Fiscal Year Annual Research Report
膵発癌マウスを用いた膵癌の微小環境を標的とした新規治療法
Project/Area Number |
22501004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊佐山 浩通 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70376458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70463841)
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Keywords | 膵癌 / 微小環境 / 腫瘍間質相互作用 / マクロファージ / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
我々の樹立した膵臓上皮特異的遺伝子改変マウス(遺伝子型:Ptfla^<cre/+>;LSL-Kras^<G12D/+>;Tgfbr2^<flox/flox>)は、Krasの活性化とTGF-betaシグナルのブロックにより、臨床の膵癌をよく近似した線維化の著明な管状腺癌を呈する。その間質の豊富な組織像から、腫瘍微小環境における癌細胞と間質との相互作用が、膵癌の発育進展に重要であることが示唆される。 本モデルの膵癌細胞は、CXCR2に結合する複数のCXCケモカインを特徴的に産生していることを我々は既に見出しており、このケモカイン産生機序及びケモカインの作用の機序について詳細な検討を行ってきた。Tgfbr2がノックアウトされた膵癌細胞では、NF-kappBシグナル依存性にCXCケモカイン産生が増強していた。このケモカインは癌細胞自体の増殖は促進せず、間質の線維芽細胞の受容体CXCR2に作用し、CTGFを産生させ、線維化・血管新生を促進することで膵癌の進展・癌組織の構築に寄与していた。このCTGF産生はTGF-betaシグナルに依存しており、TGF-betaシグナルは膵上皮ではブロックにより増殖抑制から免れることで癌化に寄与し、間質ではインタクトなシグナルが癌の進展に寄与するという作用する場の違いによる二面性が示唆された。本マウスにCXCR2阻害剤を投与すると腫瘍の増大速度が落ち、、生存期間が有意に延長し、分子標的治療としての有用性が示唆された。この腫瘍組織にはマクロファージや好中球の浸潤も顕著であり、生存が延長したマウスの腫瘍組織ではこれらの炎症細胞浸潤が減少していた。したがって、腫瘍組織中に浸潤したマクロファージなど炎症細胞も腫瘍微小環境を標的とした膵癌治療の治療標的となり得ると考えられ、マクロファージに発現するCSF1R(colony-stimulating factor 1 receptor)の阻害剤を単独およびgemecitabineとの併用でこのモデルマウスに投与し、生存期間の延長効果及び膵癌の組織学的変化につき検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵癌の微小環境、腫癖間質相互作用について、これまでに研究を進めてきたCXCケモカインの作用についてさらに検討を行い、英文の論文として報告することができた。その後マクロファージを標的としたCSF1R阻害剤を用いた検討へと進めたが、目的とする膵発癌マウスが交配によって実際に得られた確率が、理論上よりも低かったこともあり、やや進行は遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
CSF1R阻害剤のマウスへの投与、腫瘍組織の回収は進んでおり、1年後にはその解析結果を出すことは十分可能である。この薬剤の癌細胞への直接の増殖抑制効果の検討をも加えつつ、薬剤を投与した腫瘍組織における各種免疫染色により、微小環境の修飾の状況を詳細に検討する。また膵癌組織由来・正常膵由来の線維芽細胞の培養系の樹立にも成功したため、腫瘍間質相互作用の研究として、癌細胞に対する線維芽細胞の反応について、より詳細な検討を加えたいと考えている。
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Research Products
(4 results)