2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん治療法確立にむけたがん幹細胞と胚性幹細胞に共通する腫瘍性維持の分子機構解明
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22501017
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
西本 正純 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00265406)
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Keywords | UTF1 / がん幹細胞 / 胚性幹細胞 / 足場非依存的増殖 |
Research Abstract |
これまでの報告により、Oct-4,Nanogの異所的発現をともなう腫瘍細胞株のいくつかにおいて、UTF1の異所的発現が認められた。この点よりOct-4,Nanogの下流遺伝子であるUTF1の腫瘍細胞化への関与が示唆された。さらに、oct-4をノックダウンした細胞においては、ES細胞の腫瘍化としての性質は失われ、また同時にUTF1の発現も減少していた。そこでUTF1と腫瘍性のES細胞の関与を直接的に証明するために、ここへUTF1を再度強制発現させたところ、その腫瘍性は回復し、間接的ではあるがUTF1の腫瘍性への寄与を示すことが出来た。そこで今年度の計画として、本来腫瘍性を持たない細胞、例えばNIH3T3といったものにUTF1を強制的に発現させることで、その性質にどのような変化が生じるかを観察することを試みた。ここで出発材料となる腫瘍性を持たぬ細胞として、NIH3T3細胞を考えた理由としては、腫瘍細胞の重要な性質である不死化はなされているが、足場非依存的増殖、成長因子への低依存性、細胞接触による増殖停止の解除といった性質は保持していないことによる。つまり、UTF1を異所的に発現することで、これら3つの性質のうちのいずれの性質を獲得することが出来たかどうかを、明らかとすることが可能と考えたことによる。そこでUTF1の異所的発現を目的として、トランスフェクションによりUTF1発現プラスミドの導入を試み、またポジティブコントロールとしてERasを導入し、それぞれの細胞株を得た。そこでこれら細胞について足場非依存的増殖などの性質を調べたが、ポジティブコントロールであるERasにおいても、期待したような結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスフェクションにより遺伝子導入した場合、様々なプロモーターにより発現を試みたが、ポジティブコントロールとなるはずのERasにおいても期待したような結果は得られなかった。一つには導入効率の悪さならびに発現レベルの低さが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
少なくともポジティブコントロールとなるERasの導入により、足場非依存的増殖といった性質が得られるようにするため、達成度の項で述べたように導入効率の改善、ならびに発現レベルの上昇を目的として、トランスフェクションではなく、レトロウイルスやレンチウイルスといったウイルスベクターによる遺伝子導入を試みることとする。なおこの目的のための組換DNA実験安全委員会の承認は既に受けている。
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