2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規p53標的遺伝子Mieapのミトコンドリアを標的とした腫瘍抑制機序の解明
Project/Area Number |
22501021
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
中村 康之 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (90569063)
|
Keywords | p53 / ミトコンドリア / ROS / 腫瘍抑制 |
Research Abstract |
我々は、がん細胞に特異的な特徴である不良ミトコンドリアの蓄積メカニズムの解明と、それを標的とした新しいがん治療法開発のための基盤をつくるため研究を行っている。その過程で、新規p53標的遺伝子Mieapを単離同定した。Mieapは異常なミトコンドリアの修復に重要であり、ヒトがん細胞株において高頻度なメチル化を受け、不活性されていた。これらの実験結果から、不良なミトコンドリアの正常化が、がん細胞に不利に働く原因が明らかとなることが期待され、この遺伝子を用いることにより、がん治療の新しい戦略と成り得ると思われる。 アデノウイルスベクターを用いてがん細胞株にMieapを強制発現させた場合、免疫染色や免疫電顕によりミトコンドリア内にリソソームタンパク質が内在していることを明らかにした。このようなMieap発現細胞では、非発現細胞と比較してミトコンドリア内酸化タンパク質の蓄積が解消されていた。また、Mieap発現細胞ではミトコンドリアのATP合成能が高いことが明らかとなった。このことから、Mieap発現によりミトコンドリア内酸化タンパク質がリソソームにより分解、除去され、ミトコンドリアが正常化していることが示唆された。 Mieap機能解析として、Mieap結合タンパク質の同定を行った。それらのタンパク質のうち、Mieapによる不良ミトコンドリアへのリソソーム移行に関わるものとして、BNIP3およびNIXを同定した。 さらなるMieap機能解析のため、Mieapノックアウトマウスを作成し、加齢に伴う表現型の解析を行っている。今後、Mieapノックアウトマウスと大腸がん発生モデルマウスとの交配によって、大腸がんの進展過程におけるMieapの役割を解析する。動物を用いた実験は、培養細胞では得られないものであり、細胞のみではなく組織や個体レベルでのMieap機能を行うことが可能である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん細胞に特異的な特徴である不良ミトコンドリアの蓄積メカニズムの解明について、現在までに不良ミトコンドリアの修復に関わる新規p53標的遺伝子Mieapを同定した。Mieapは、リソソーム様オルガネラを不良ミトコンドリア内へ移行し、酸化タンパク質を除去することによりミトコンドリア修復に関わることを示唆した。この現象にはMieap結合タンパク質であるBNIP3およびMXが重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらなるMieap機能解析のため、Mieapノックアウトマウスを作成し、加齢に伴う表現型の解析を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Mieap機能解析のために作成したMieapノックアウトマウスと大腸がん発生モデルマウスとの交配によって、大腸がんの進展過程におけるMieapの役割を解析し、がん治療法開発のための研究を進めていく。また、Mieapノックアウトマウスより作成したマウス胎児線維芽細胞(MEF)を用いて、Mieap欠損細胞における細胞生物学的解析を進めていく。これらのMEF細胞やヒトがん細胞株、正常細胞株を用いて、免疫電子顕微鏡観察を行うことにより、Mieapがリソソームを不良ミトコンドリア内へ移行させ、内在する酸化タンパク質を除去するという機能について詳細に解析していく。
|