2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規腫瘍免疫回避機構の責任分子同定と回避機序解明:奏功規定バイオマーカー探索へ
Project/Area Number |
22501023
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡野 慎士 九州大学, 大学病院, 臨床助教 (10380429)
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫回避機構 / バイオマーカー / 癌 |
Research Abstract |
腫瘍の免疫回避機構に関わる詳細な分子機序解明のために、B16F1メラノーマ拒絶モデルを用いて、現在までに報告のない腫瘍免疫回避機構による特異的腫瘍免疫応答を回避する細胞株を樹立した。この腫瘍株の出現は、αβ型T細胞欠損マウスでは出現しなかったことから、T細胞応答依存性であると考えられた。B16F1メラノーマ細胞株をクローン化し、そのクローンを上記の樹状細胞を用いた拒絶モデルで拒絶応答を惹起させたところ、このクローンから拒絶を回避する細胞株が発生することを確認した。このクローン発生のためには約80日の期間が必要であった。 腫瘍免疫応答を回避する細胞株と免疫回避機構獲得前の細胞株のマイクロアレイおよびreal time PCRの解析にて、13個の責任遺伝子をセレクションした。発現が上昇する12個の遺伝子について、CAGプロモーターを有する発現プラスミドベクターに挿入、クローニングした。このプラスミドを用いてB16F1クローン由来の安定発現細胞株を作製した。この細胞株を腫瘍を拒絶した免疫マウスに接種し、拒絶応答が回避されるかどうか検討したところ、1個の因子の強制発現細胞株で拒絶応答の遅延が認められたが、最終的には拒絶された。このことは、少なくとも上記遺伝子の一因子の強制発現では、拒絶回避には不十分であることが示唆された。 生体内での拒絶応答回避に複数の遺伝子が複合的に関与する可能性を考え、レンチウイルスベクターの発現システムを立ち上げた。上記発現上昇する遺伝子2因子を発現するレンチウイルスベクターを作製した。 本研究結果は、ゲノムの不安定性を獲得している悪性腫瘍は、免疫応答に依存して免疫応答を回避する機構を獲得すること、その機構は、複数の遺伝子発現制御による分子機序が働いている可能性とその機序の一端がこれまで報告のない分子機序によって誘導されていることが示唆された。
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Research Products
(10 results)