2011 Fiscal Year Annual Research Report
顕微質量分析法による代謝物分布情報に基づく腫瘍不均一性の検証
Project/Area Number |
22501034
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
涌井 昌俊 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90240465)
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Keywords | がん / 腫瘍組織 / 顕微質量分析 / 代謝物 / 不均一性 / 代謝適応 / in vivoモデル / 臨床検体 |
Research Abstract |
免疫不全動物であるNOGマウスにヒトがん細胞株を移入し、本研究に適するように確立したin vivoモデルをさらに発展させるべく、MALDI-mass spectrometry imagingの定量性の問題を考慮して異なるサンプル切片問での比較検討を可能にする新規の半定量的解析法を開発し論文発表に至った。これにより、同一アッセイでない複数のサンプルを比較して知見を得ることが可能となった。in vivoモデルにおける皮下腫瘍組織を対象にMALDI-mass spectrometry imagingによる解析を通じて腫瘍組織内の代謝の不均一性が示された。壊死部近傍において脂肪酸異化亢進を示唆する代謝中間体の特徴的な分布が明らかとなり、低酸素や飢餓等の環境ストレスに対するがんの特異な代謝適応の存在が示唆された。このようながんの特異な代謝適応の分子基盤を明らかにすることで新たながんの診断・治療の分子標的がもたらされることになる。 研究機関内の倫理委員会の承認のもと、患者の同意を得た手術検体を用いてヒトがんを対象とするMALDI-mass spectrometry imagingによる解析を実施した。前年度に確立したサンプリング法に準じて、複数症例の肝細胞がん(HCC)と肝内胆管細胞がん(CCC)の腫瘍組織を採材し解析した結果、腫瘍内における脂質の特異な分布が検出された。このような代謝物の組織局在は、これまでの形態学的組織所見のみでは限界のあった腫瘍病理学的理解を深化させる極めて有用な所見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本となるin vivoモデルの確立と臨床検体の最適なサンプリング法の確立が前年度に実現できたため、概ね計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoモデルにおけるMALDI-mass spectrometry imagingによる解析を通じて腫瘍の代謝不均一性を示す所見を集積しつつ、それをもたらす分子基盤を理解するために代謝関連分子の挙動を遺伝子発現解析等で検討する。動的に腫瘍組織内の代謝不均一性を把握することをめざし、質量同位体標識物質投与後のin vivoモデルにおけるMALDI-mass spectrometry imagingによるフラクソームイメージングのアッセイに着手する。臨床検体を用いたMALDI-mass spectrometry imagingによる解析をさらに集積するとともに、特徴的な分布を示す脂質代謝中間体の詳細を同定する。当該年度の研究を通じて、脂質の検出がマトリックス塗布法によって影響されることが明らかとなり、同じマトリックスでもスプレー法と蒸着法の両方で測定・解析を行い、知見を集積する方針である。
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