2011 Fiscal Year Annual Research Report
癌転移を抑制するmiRNAの標的タンパク質のプロテオーム解析による探索
Project/Area Number |
22501040
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
原 康洋 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (70568617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝長 毅 独立行政法人医薬基盤研究所, プロジェクトリーダー (80227644)
松原 久裕 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20282486)
石濱 泰 京都大学, 薬学研究科・製剤機能解析, 教授 (30439244)
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Keywords | プロテオミクス解析 |
Research Abstract |
microRNA(miRNA)は遺伝子発現を制御する短いnon-coding RNAである。近年miRNAが癌の発生、転移に関与するとの報告が多く見られるが、その標的となるタンパク質は遺伝子の配列に基づいて推測されているに過ぎない。そこで本研究では、癌転移抑制効果を有するmiRNAの標的タンパク質のプロテオーム技術を用いた探索を目的とし、それらmiRNAの転移抑制能の実験的検証を行った。平成23年度は乳癌細胞の転移を抑制することが報告されているmiRNA-31,miRNA-206,mRNA-335(miR-31,miR-206,miR-335)に着目した。miR-31,miR-206,miR-335のターゲットとして癌転移に関与すると思われるタンパク質が複数予測されているが、実際にそれらのタンパク質の抑制を介して乳癌細胞の転移を抑えるか十分な検証がなされていない。そこで我々はmiR-31,miR-206,miR-335による乳癌細胞の転移抑制の実験的検証を行った。転移性乳癌細胞株MDA-MB-231にレンチウイルスベクターを用いてmiR-31,miR-206,miR-335をそれぞれ導入し、それらmiRNAの恒常的発現細胞を作製した。miR-31,miR-206,miR-335導入細胞とコントロールベクター導入細胞の浸潤能をマトリゲル・インベージョン・チャンバーを用いて比較したところ、それらmiRNA発現細胞に浸潤の抑制は見られなかった。今回の研究により、乳癌転移抑制効果を有すると報告されていたmiRNAの転移抑制能が真に普遍的なものではないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的は乳癌転移を抑制すると報告されているmicroRNAに着目し、最新のプロテオーム技術を用いてターゲットとなるタンパク質を同定することであった。3種類のmicroRNAを発現する乳癌細胞株を作製し、その中でも最も顕著に転移を抑制すると報告されていたmicroRNA-31発現細胞を用いてプロテオーム解析を行い、発現が変化しているタンパク質を同定したことで、この目的に関しては達成できた。しかし、それら3種類のmicroRNAによる乳癌細胞の転移抑制の実験的検証を行ったところ、転移抑制能は確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
乳癌転移を顕著に抑制すると報告されているmicroRNAの発現細胞を作製し、最新のプロテオーム技術を用いてターゲットとなるタンパク質を同定することを計画していた。この計画に関しては技術的に問題なく進めることができたが、本研究で行った実験的検証では、これまで報告されていたmicroRNAの乳癌転移抑制効果は再現しなかった。本研究におけるmicroRNA発現技術、プロテオーム技術は研究遂行に十分であるため、今後の対応は対象とする microRNAの選択が中心となる。
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