2011 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪酸パルミチン酸アミド体を使った大腸がん分子標的療法の開発
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22501050
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
酒々井 眞澄 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30347158)
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Keywords | 脂肪酸誘導体 / 抗がん剤 / 構造活性相関 / インシリコ解析 / 創薬 / 50%致死率 / ファルマコフォア / チロシンキナーゼ |
Research Abstract |
本年度目的は、前年度に得られた抗がん剤903とそのファルマコフォアの情報を基に抗がん剤903をリードとして構造を最適化することである。飽和炭素鎖にアミド結合するピペリジンは求核基として働くと考えられ、インシリコ解析でのc-kitチロシンキナーゼのリン酸化ドメインへの親和性に関する3次元イメージ結果を考慮して、ピペリジンの構造を修飾した新たな化合物を分子設計した。この化合物の分子量は約420であり、カルボキシル基に結合する側鎖に窒素分子数個を含む立体構造を呈する。また、脂肪酸であるデセン酸の構造の一部と同じ構造を組み込み、抗がん剤903をリードとして20種類程度の新規化合物を合成した。内数種類のものは、HT29細胞株およびHCT116細胞株に対してIC50<0.2マイクロモルであることがわかった。リードである抗がん剤903を凌駕する新たな抗がん剤の創製に成功した。抗がん剤903の個体レベルでの抗がん効果を検証するための前実験として急性毒性試験を実施した結果、LD50値を得ることができた。SDラット雄で約1,000mg/kg、雌で約500mg/kgであることがわかった。高用量短期経口投与に伴う主な症状として肉眼および組織学的に消化管のびらん、潰瘍がみられたが、肝細胞は比較的変化が少ない所見であった。抗がん剤903のヒト大腸がん以外の固形がんに対する抗がん効果を調べた結果、ヒト肝がん、ヒト肺がん、ヒト悪性中皮腫、マウス悪性黒色腫に対するIC50は2から5マイクロモルであることがわかった。抗がん剤903は固形がんに対して広範な抗がんスペクトラムを有することを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子設計でねらった化合物を効率良く合成することができ、合成した複数の誘導体の中に安定した抗がん効果を発揮する化合物が含まれたこと。共同研究によりラージスケールでの合成が可能になり、動物実験を実施することができた為。
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Strategy for Future Research Activity |
ラージスケールでの高収率合成法を確立したのでグラム単位で抗がん剤903を合成し、ヌードマウス皮下移植モデルにて個体レベルでの抗がん効果を検証する。有効性を確認後、強制経口投与あるいは混餌投与にて消化管腫瘍自然発症モデル(Minマウス等)を用いて抗がん効果(腫瘍発生抑制率、生存率)、有害作用を検討する。投与形態と剤形を検討する。引き続きインシリコ解析データのウエットでの検証実験を行う。
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Research Products
(5 results)