2010 Fiscal Year Annual Research Report
生存増殖シグナル伝達系における乳癌のプロファイリング解析研究
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22501055
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
堀井 理絵 財団法人癌研究会, 癌研究所病理部, 研究員 (20446272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 太 財団法人癌研究会, 癌研究所病理部, 臨床病理担当部長 (50222550)
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Keywords | 生存増殖シグナル伝達系 / 乳癌 / バイオマーカー / プロファイリング解析 |
Research Abstract |
生存増殖シグナルの異常な活性化は癌細胞の異常増殖・不死化の一因であり、シグナル伝達阻害は抗癌剤の重要な作用機序のひとつである。現在、乳癌においては、HER2を標的とした2種類の抗癌剤が保険収載されており、その適応は、HER2タンパクの発現状況とHER2遺伝子増幅の有無により決定される。一方、シグナル伝達系の下流を標的とする薬剤が複数開発中であり、シグナル伝達にかかわる因子はそれらの適応を決定するバイオマーカーとして期待されている。癌診療において、複数の分子標的治療薬を使い分けるために多くのバイオマーカーを検索する時代はすぐそこまで来ている。 そこで、我々は、多数の乳癌検体を用いて、シグナル伝達系を網羅的に解析する研究に着手した。シグナル伝達にかかわる因子の発現状況を広く把握することは、癌全体においては薬剤開発の効率化に寄与し、個々の症例においては分子標的治療個別化のモデルとなると期待している。 平成22年度は、1996年に当院で手術を施行した浸潤性乳管癌340例を対象に研究を行った。切除検体の原発巣代表切片を用いて、シグナル伝達系の各因子(HER2,pAKT,CyclinD1,p27,p4EBP1,pS6K,pMAPK/ERK)およびホルモンレセプター(ERα,PgR)を免疫組織学的に検索し、各因子の発現状況を検索した。全340例における各因子の陽性率は、pAKT:74%、Cyclin D1:12%、p27:53%、p4EBP1:19%、pS6K:38%、pMAPK/ERK:3%で、トリプルネガティブ(ERα陰性かつPgR陰性かつHER2陰性)乳癌66例における各因子の陽性率は、pAKT:59%、Cyclin D1:0%、p27:21%、p4EBP1:26%、pS6K:35%、pMAPK/ERK:0%であった。この結果は、第48回日本癌治療学会学術総会のシンポジウム「分子標的治療におけるバイオマーカーの役割」で発表した。現在、各因子の発現状況で症例ごとのフィンガープリントを作成し、そのパターンによる分類(プロファイリング)を試みている。今後、分類された各群で予後を含む臨床病理学的因子を比較検討する予定である。
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Research Products
(1 results)