2011 Fiscal Year Annual Research Report
臨床検体を用いた統合的オミクス解析による骨転移関連遺伝子の網羅的探索と臨床応用
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22501057
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
近藤 格 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 章 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (90252965)
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Keywords | 転移性骨腫瘍 / プロテオーム解析 / 網羅的解析 |
Research Abstract |
骨転移は数多くの悪性腫瘍で発生し、日本国内においては10万~20万人の骨転移症例が存在する。治療法の進歩により完治しないまでも長期に生存する症例が増えているので、骨転移の症例数はこれから増加していくと考えられる。従って転移性骨腫瘍の分子機構の解明および新たな治療法の開発は急務である。本年度は、骨転移に特徴的なタンパク質発現を網羅的に同定するために、手術によって得られた転移性骨腫瘍と悪性腫瘍の原発巣検体を用いて解析を行なった。用いた検体は骨転移巣(11症例:肝細胞癌骨転移3例、肺癌骨転移3例、乳癌骨転移1例、腎細胞癌骨転移1例、胃癌骨転移1例、膵臓内分泌腫瘍骨転移1例、耳下腺癌骨転移1例)と原発巣(肝細胞癌原発巣4症例、肺癌原発巣4症例、大腸癌原発巣4症例)であった。蛍光二次元電気泳動法により、骨転移巣と原発巣のタンパク質発現プロファイルを網羅的に比較・解析した。その結果、合計2590のタンパク質スポットを観察し、統計解析の結果では、骨転移巣と原発巣の2群間で215のタンパク質スポットに有意な発現差を認めた。(P<0.01,>2folddifferences)52スポットは骨転移巣で発現が上昇し、163スポットは原発巣で発現が上昇していた。これらのタンパク質スポットに対して、質量分析によるタンパク質の同定を行なった結果、癌の骨転移に関わると考えられている酵素タンパク質、癌の悪性度に関わるタンパク質の同定に成功した。また、骨転移に共通して発現するタンパク質だけでなく、原発巣ごとに発現の異なるタンパク質も同定した。現在、これらの発現差を認めたタンパク質について、転移性骨腫瘍の診断バイオマーカーや治療標的のシーズ探索を行ない、多数症例における検証実験をすすめている。また今後、機能的な検証として、培養細胞を用いた解析を行なっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
想定していたよりも転移性骨腫瘍の手術件数が少なく、骨転移巣の臨床検体の収集に時間がかかった。そのため、研究の進行は当初の計画に比しやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、同定した複数の骨転移関連遺伝子について、細胞株を用いた機能解析を行なう。また、多数症例を用いた発現の検証実験を行ない、骨転移バイオマーカーおよび創薬シーズとしての可能性を検討する。
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