2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓癌発症メカニズムと薬物代謝酵素の遺伝子多型との関連
Project/Area Number |
22501059
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
安原 一 昭和大学, 医学部, 名誉教授 (70053999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉田 知光 昭和大学, 教養部, 教授 (80231299)
西村 有希 昭和大学, 医学部, 講師 (40276572)
岩瀬 万里子 昭和大学, 医学部, 助教 (70424273)
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Keywords | 遺伝子環境交互作用 / 発がんメカニズム / CYP2C19 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
肝臓癌とチトクロームP450(CYP)2C19の発現・遺伝子変異との関連性を明らかにすることを目的として検討を行った。原発性肝臓癌患者4名、転移性肝臓癌患者2名より提供を受けた肝臓、血液試料を用いてCYP2C19遺伝子多型、活性、タンパク含量を測定し、解析は昨年度に得られた原発性肝臓癌3例、転移性肝臓癌5例と併せ計14例で行った。さらに本年度はCYP2C19 mRNA量および炎症性サイトカイン量を測定した。日本人のpoor metabolizerを説明するのに重要なCYP2C19*2、CYP2C19*3の遺伝子頻度は、転移性肝臓癌患者ではそれぞれ0.29、0.21であり、健常者で報告されている頻度(0.22、0.12)に比べ高かった。また、肝臓および血液両試料より判定したCYP2C19遺伝子多型は全例で一致したことから、本遺伝子変異は腫瘍周辺部位において癌病態により後天的に生じるのではなく、先天的な遺伝子変異が肝臓癌発症に関与することが示された。一方、CYP2C19に変異のない*1/*1遺伝子をもつ5例でもCYP2C19活性は低値を示したが、タンパク量やmRNA量との関連性は認められず、肝臓癌患者においては本活性の発現に癌病態に関わる他の因子が関与することが示唆された。しかし、肝における炎症性サイトカインの発現量と変動する種類には個体差が認められ、CYP2C19活性との間に相関性が認められなかった。以上のことから、転移性肝臓癌で高頻度に認められるCYP2C19遺伝子変異は、先天的に生じることが明らかとなったが、活性、mRNA量、タンパク量の変動との一致は認められなかった。今後、CYP2C19遺伝子多型解析を肝臓癌の早期発見に応用する可能性を考え、肝臓癌発症および転移とCYP2C19酵素発現および変異との関連性について明らかにするため、さらに検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに14名の同一の肝臓癌患者より血液と肝臓の両試料を得ることができ、CYP2C19遺伝子型の解析、比較が可能であった。また、予定していた通り、mRNA量の測定やサイトカイン類の測定も順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、肝臓癌患者より得られた試料を用いてCYP2C19の遺伝子変異をCYP2C19*2およびCYP2C19*3で検討してきたが、判定した遺伝子型とCYP2C19活性、タンパク量、mRNA量および炎症性サイトカイン量との関連性は認められなかった。そこで今後、CYP2C19*17を含む他の多型に対しても検討を行い、肝臓癌発症との関連性を検討する。さらに原発性肝臓癌と転移性肝臓癌では上記測定項目の結果が異なることが示唆されたため、さらにサンプル数を増やして比較検討する。
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Research Products
(1 results)