2013 Fiscal Year Annual Research Report
末梢血ガンマ・デルタ型T細胞の及ぼす腎癌予後への影響
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22501061
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
小林 博人 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80318047)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腎細胞癌 / ガンマデルタ型T細胞 / 予後 |
Research Abstract |
腎細胞癌について、末梢血中のγδ型T細胞と予後との関連についてフォローを行った。新規に腎細胞癌と診断され、手術をした患者の術前末梢血γδ型T細胞のT細胞に占める割合と実数と転移・再発との関連を調べた。新規腎癌全151症例の解析を行った。観察期間3-54ヶ月(中央値38ヶ月)で、手術時に転移のある症例が12症例、術後3-48ヶ月(中央値17ヶ月)で再発を認めた症例が19症例あった。有転移症例(癌有り生存+癌死)と癌無し生存を、末梢血単核球中のCD3陽性細胞の割合(%)、CD3陽性細胞に占めるCD8陽性細胞の割合(%)、CD3陽性細胞に占めるCD4陽性細胞の割合(%)、CD3陽性細胞に占めるVδ2陽性細胞の割合(%)及び、CD3陽性細胞、CD8陽性細胞、CD4陽性細胞、Vδ2陽性細胞の実数(個/μL)を比較した。統計的有意差(p<0.05)を認めたものは、CD3陽性細胞(p=0.02)、CD8陽性細胞(p=0.02)であった。また、有転移症例のうち癌有り生存と癌死症例と同様に検討するとCD4陽性細胞(p=0.04)であった。興味深いことに、本検討対象となる151症例のうち、限局性腎癌であるT1及びT2症例では129症例の内、10症例にて術後10.7ヶ月から48.2ヶ月で再発を認めた。それらの症例と末梢血中のリンパ球分画%と実数を検討すると、γδ型T細胞の割合および実数に統計学的に有意差を認めた。限局腎癌で根治手術が行われても、末梢血中のγδ型T細胞が少ない場合、特に末梢血T細胞中の2%未満の場合は、2%以上の症例と比較して7倍再発リスクが高く、より厳密な術後フォローが必要になると考えられた。以上よりγδ型T細胞は、腎癌の早期転移を抑制する可能性が示唆された。早期腎癌の治療戦略において、末梢血γδ型T細胞の少ない場合は、γδ型T細胞を増やすことが再発予防になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度としては、おおむね順調に進展していると考えられる。腎癌術後のフォロー期間が中央値で38ヶ月になり、ほぼ全症例が東京女子大病院にてフォローアップされており、非常に精度の高い臨床研究が進行できている。また、局所限局癌で根治的な手術が出来た症例においても、末梢血γδ型T細胞のT細胞に占める割合や、実数が腎癌予後に影響していることが強力に示唆されるデータが蓄積されてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度から25年にかけて、新たに2症例に転移が見つかった。全てのステージにおいて、術後転移・再発を期待した症例と癌無し生存の症例の間では、術前の末梢血γδ型T細胞の割合と数との間には有意な相関は認めなかった。しかし、早期ステージの限局性腎癌では、術後再発と術前の末梢血γδ型T細胞の割合と数との間には有意差を認めるようになった。早期腎癌については、予後と術前のγδ型T細胞と間に有意な相関を認め、本臨床試験のPOCは取得できたものと考えられた。本年はデータの固定を行い、学会発表及び専門誌への論文投稿を行う。 本年度の研究に於いて、早期限局腎癌症例で術前の末梢血γδ型T細胞の割合および数が少ないと、有意に再発リスクが7倍高くなることがわかった。今後の研究の方向性としては、術前の末梢血γδ型T細胞が少ない症例、つまり免疫監視機構が抑制されている原因解明に繋がるようなデータの集積および、そのような症例で末梢血のγδ型T細胞を増やすことが再発予防に繋がるのかの基礎データ集積を検討したい。
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