2011 Fiscal Year Annual Research Report
フルボ酸鉄による沿岸性植物プランクトン鉄摂取増殖機構
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22510001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久万 健志 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30205158)
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Keywords | 河川フルボ酸 / 溶存有機錯体鉄 / コロイド状鉄 / 沿岸性珪藻 / 培養実験 |
Research Abstract |
フルボ酸を含まない河川水に比べ、フルボ酸が高濃度含まれる河川水中には種々の化学形態の鉄[全鉄(未ろ過)、溶存鉄(コロイド鉄+真の溶存鉄:<0.22μm size)、真の溶存鉄(<0.025μm size)]が高濃度含まれており、フルボ酸が3価鉄と溶存有機錯体を形成し、溶存鉄(コロイド鉄+真の溶存鉄)を安定に存在させる役割を果たしている。またフルボ酸を多く含む河川では、水温の低くなる冬に高濃度の2価鉄が検出される。これは、還元状態堆積物からのフルボ酸及び2価鉄の直上水への供給と、冬の低水温(0~5℃)環境での2価鉄の酸化速度が極端に遅くなったためである。また3価鉄と溶存有機錯体を形成するフルボ酸の過剰な存在は、2価鉄が酸化し粒状3価水酸化鉄にならずに溶存3価鉄有機錯体を形成し、比較的安定に存在するために重要であると推察される。溶存鉄(コロイド鉄+真の溶存鉄:<0.22μm size)と真の溶存鉄(<0.025μm size)に分画した河川水を沿岸性珪藻-栄養塩培地に添加し、河川起源の鉄の各化学形態存在下における細胞密度及びクロロフィルa濃度を測定した。その結果、無機3価鉄を添加するより河川起源の溶存鉄及び真の溶存鉄を添加した方が、より細胞密度が増加した。これは、海水への無機3価鉄添加は急激な加水分解により粒状水酸化鉄になるが、河川水中の溶存3価鉄有機錯体は徐々に解離し、生物利用可能な鉄を供給したことによると考えられる。しかしながら、クロロフィルa濃度は河川起源の溶存鉄及び真の溶存鉄を添加するより、無機3価鉄を添加した方が増加した。このことは、クロロフィル合成を阻害する微量金属が河川水に含まれていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定結果は得られているが、まだ十分に解析されていない部分がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は最終年度であるため、さらに河川水と海水の混合実験を行い、フルボ酸が鉄の化学形態にどのように影響するかを調べる。またさらに河川起源の鉄の各化学形態存在下における沿岸性珪藻の培養実験を行い、河川水中のフルボ酸が植物プランクトンによる鉄摂取増殖にどのように関わっているか解明する。またクロロフィルa合成を阻害する河川水中に含まれる微量金属を明らかにし、その対処法を検討する。
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Research Products
(2 results)