Research Abstract |
当該研究の目的は,外洋域における大気海洋の境界過程とこれが海洋表層生態系に与える影響の実態を直接観測により解明し、海洋生態系モデルの精度を向上させることである。そのため,平成22年度は,(1)GPS波浪ブイの多機能化と試験,および(2)既往の海洋生態系モデルの検証,を実施した。(1)GPS波浪ブイの多機能化と試験では,まず,応募者所有のGPS波高計センサ付設の漂流ブイ(GPS波浪ブイ)の精度検証を,神奈川県平塚市の2km沖合に設置された東京大学平塚観測塔にGPS波浪ブイを係留して実施した。観測塔に設置されている超音波式波浪計と比較したところ,GPS波浪ブイの測定誤差は,有義波高で10cm未満,有義波周期で0.3s未満であり,実用に十分耐える精度を有することを確認した。続いて,GPS波浪ブイに,水温・塩分・クロロフィル・溶存酸素センサから構成される多項目水質計を付設し,平成23年2月25日~3月11日の学術研究船白鳳丸KH-11-3次航海(前半)において,試験運用を実施した。波浪データをはじめ,各水質データを問題なく計測・送受信できることを確認し,GPS波浪ブイの多機能化の第1段階をクリアした。続いて,同航海の後半(3月13日~3月25日)において,大気乱流・海洋表層乱流観測と同時に本多機能ブイの観測を行って,大気海洋相互作用と海洋表層生態系の同時直接観測を世界で初めて実現する予定であったが,3月11日に発生した東日本大地震の影響で本航海の後半日程が中止となったため,実施できなかった。この観測については,平成23年度に別途航海を申請して実施する予定である。次に,(2)既往の海洋生態系モデルの検証では,物理場をデータ同化した海洋の低次栄養段階の生態系モデルによる追算実験を実施し,上記航海および既往の観測データと比較して、モデルの問題点を抽出した。
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