2010 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性有機化合物大気化学の安定同位体比解析法の基盤構築
Project/Area Number |
22510006
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 桂太 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教 (70323780)
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Keywords | 揮発性有機化合物 / 安定同位体比 / マイクロ固相抽出 / GC-P-IRMS / GC-C-IRMS |
Research Abstract |
大気中揮発性有機化合物(VOCs)は、OHラジカルとの反応や有機エアロゾルの形成を通じて、放射強制力や気候に多大な影響を及ぼしている。その重要性にも関わらず、各放出源・消滅過程とその量的バランス(収支)、大気中での反応に関して、未だ不明な点が多い。申請者はこれまでに、放出源近傍の大気試料について揮発性有機化合物の安定炭素同位体比を簡便に計測する方法を構築した。本研究では、その手法を安定水素同位体比計測に拡張するとともに、バックグラウンド濃度の大気試料へ発展させることで、揮発性有機化合物の大気化学的議論を進展させる安定同位体比解析法の基盤構築を目指す。申請者はこれまでに、マイクロ固相抽出法(Solid Phase Microextraction, SPME)とガスクロマトグラフィー-燃焼-同位体比質量分析法(GC-C-IRMS)を組み合わせた炭素同位体比計測法(SPME-GC-C-IRMS法)を構築した。これは、2ppm程度の比較的高濃度でVOCsを含む大気試料が20cc程度あれば、迅速かつ高精度に炭素同位体比が計測できるという方法である。本年度は本手法を水素同位体比計測に拡張した。特に、メタノール、エタノール、アセトアルデヒド、イソプレンなど、大気化学的に重要な化合物を選定し、その計測方法を検討した。検討に際し、それぞれ高純度試薬を購入して、封かん燃焼法、亜鉛還元法を用いてそれらの水素同位体比を決定し、同位体標準物質を作成した。これら標準物質を用いてSPME-GC-P(熱分解)-IRMS法による水素同位体比計測法を検討した。結果、5ppmのVOCでそれぞれ±5‰で水素同位体比が計測できることがわかった。実際の植物葉試料に適用して、いくつかの種類の樹木が放出するイソプレンの水素同位体比を決定することが出来た。またそれらは、気温などの外的要因によって30‰程度変動する可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)