2011 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性有機化合物大気化学の安定同位体比解析法の基盤構築
Project/Area Number |
22510006
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 桂太 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教 (70323780)
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Keywords | 揮発性有機化合物 / 安定同位体比 / マイクロ固相抽出 / GC-C-IRMS / アセトアルデヒド |
Research Abstract |
大気中揮発性有機化合物(VOCs)は、OHラジカルとの反応や有機エアロゾルの形成を通じて、放射強制力や気候に多大な影響を及ぼしている。その重要性にも関わらず、各放出源・消滅過程とその量的バランス(収支)、大気中での反応に関して、未だ不明な点が多い。申請者はこれまでに、放出源近傍の大気試料について揮発性有機化合物の安定炭素同位体比を簡便に計測する方法を構築した。本研究では、その手法を安定水素同位体比計測に拡張するとともに、バックグラウンド濃度の大気試料へ発展させることで、揮発性有機化合物の大気化学的議論を進展させる安定同位体比解析法の基盤構築を目指している。申請者はこれまでに、マイクロ固相抽出法(Solid Rhase Microextraction,SPME)とガスクロマトグラフィー-燃焼-同位体比質量分析法(GC-C-IRMS)を組み合わせた炭素同位体比計測法(SPME-GC-C-IRMS法)を構築している。本年度は、植物が放出するアセトアルデヒドに着目し、いくつかの植物試料を用いて、本計測方法を用いた炭素同位体比計測を行った。さらに、本計測方法のGC-C-IRMS部分に熱分解GCを付け加えることで、アセトアルデヒドの分子内の炭素同位体比が計測できるようになった。その結果、同じC3植物が放出するアセトアルデヒドの分子レベル炭素同位体比は同じ値であっても、分子内同位体比が草本と樹木で異なる特徴を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定のバックグラウンド大気への計測法の拡張は進んでいないが、代わりに化合物の分子内レベルの炭素同位体比計測法を可能とした。この方法は、本計画の目的である植物由来揮発性有機化合物の大気化学的議論を進展させる安定同位体比解析法として非常に有効なものだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、植物由来揮発性有機化合物の分子レベル炭素・水素同位体比の計測法を確立し、さらにバックグラウンド大気への拡張を目指すものであるが、23年度の研究で、分子内レベルの炭素同位体比計測法を開発することができた。植物試料に適用した予察的な結果からは、本計測が揮発性有機化合物の大気化学に非常に重要な知見をもたらす可能性があることが示唆された。今後はバックグラウンド大気への拡張と並行して、分子内レベルの炭素同位体比計測の有用性を実証する内容を重点的に推進する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article]2012
Author(s)
C. Wu, K. Yamada, O. Sumikawa, A.Matsunaga, A. Gilbert, N. Yoshida
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Journal Title
Rapid Communications in Mass Spectrometry
Volume: 26
Pages: 978-988
DOI
Peer Reviewed
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