2011 Fiscal Year Annual Research Report
自然レベル放射性炭素を用いた海洋古細菌による水温決定に関する同位体地球化学的検討
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22510020
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
近藤 美由紀 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (30467211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 真生 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60323250)
内田 昌男 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 主任研究員 (50344289)
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Keywords | 物質循環 / マリンクレナキオータ / 放射性炭素 |
Research Abstract |
本研究では、堆積物に保存されている海洋性古細菌(マリンクレンアーキオータ)細胞膜脂質(GDGTs)を用いた水温(TEX86)復元プロキシーの実用化をめざすため、堆積物コアを採取する現場海域におけるGDGTs有機化合物を作るマリンクレンアーキオータのバイオマス量の水深分布やクレンアーキオータの起源について明らかにすることを目的としている。本年度は、LC/MSによるGDGTs有機化合物の定量の精度向上のため、海外の研究機関との間で、赤道域、温帯、高緯度域で採取された海洋堆積物、土壌試料を用いた比較検討実験を行った。それらの測定結果は、各ラボ間での誤差について統計的に処理が行われ、異なるLC/MS間での測定値の相互比較のための重要な基礎データとなる。さらに、フィルター試料を用いたGDGTsの抽出条件について分析化学的検討を進め、最適な抽出条件を決定することができた。加えて、分取高速液体クロマトグラフによる分離精製条件についても検討を行った。以上の検討に続き、精製されたGDGTs有機化合物の放射性炭素測定の為の試料前処理に検討を始めた。特に分取高速液体クロマトグラフのカラムブリードによる汚染炭素量の把握をするための実験を進めた。その結果、現在想定している分取量(数十マイクログラム炭素)に対して、数マイクログラム相当の汚染があることが分かった。これらの汚染量は、分取で使用する溶媒量に比例しているため、最終的には、マスバランスの関係を用いて補正ができることが確かめられた。これらの条件を用い、現在、静岡県深層水施設で採取したフィルター試料並びに北極海底質試料からのGDGTsの抽出、定量分析も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静岡県駿河湾において海水の大量濾過を行った。これにより得たフィルター試料からの微生物膜脂質分子(エーテル脂質(古細菌)、脂肪酸(細菌))の抽出法の検討と同定を行った。フィルターは、大容量ソックスレー抽出機により、溶媒可溶脂質成分の全抽出を行い、その後、アルカリけん化処理を行う。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる、中性成分から、古細菌膜脂質GDGTsを分画し、LC/MSにより定量・同定を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
海域各深度におけるGDGTsの炭素源を明らかにし、堆積物に保存されているGDGTsから求められる水温(TEX86)がどの水深を反映しているのか特定し、堆積物に保存されている海洋性古細菌(マリンクレンアーキオータ)細胞膜脂質(GDGTs)を用いた水温(TEX86)復元プロキシーの有効性の確認を行う。
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