2011 Fiscal Year Annual Research Report
全球塩分変動メカニズムの解明と地球規模の水循環変動との関連
Project/Area Number |
22510023
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
細田 滋毅 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー代理 (60399582)
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Keywords | 海洋表層混合層 / Argoフロート / 混合層データセット / 塩分変動 / 太平洋 / データ同化 |
Research Abstract |
平成23年度は、Argoフロート、海面観測衛星、データ同化等のデータセットを用いた解析を進めた。昨年度準備した全球混合層深度データセットは、インターネットを通じて一般に公開し広く利用できるように整えた。これらの準備、成果を踏まえ、春から夏にかけて増大する正味の海面熱フラックスと海洋表層・亜表層との季節変動特性について研究を進めた。特に亜熱帯域において直接大気と接していない季節躍層下の海洋亜表層の貯熱効果が海面水温変動に重要であることを示した。この表層における熱交換過程の成果は、長期的な気候変動・水循環変動の理解にとって重要であり、気候予測モデルの結果に対する影響も予想されるため、成果を学会等で発表するとともに論文としてまとめ、間もなく投稿予定である。また、データ同化によるデータセットを用いた全球表層塩分変動メカニズムに関する解析を試みた。このデータセットを用いる利点は、観測データを反映した格子化データであり、表層塩分変動に関して定量的な解析が可能という点であるが、現時点で塩分と降水量変動との関連性が明確ではなく、さらに解析を進めている。 一方、他の研究者と連携し、太平洋熱帯域での塩分長期変動の特性についての研究も進め、降水量と表層塩分変動との間に10年規模の周期的変動が存在することを示した。その成果は、温暖化に伴う水循環・塩分変動特性と密接に関連するため、共著者として参加した学会発表等で発表されるとともに、専門雑誌に論文投稿中である。また、表層塩分変動と関わりの深い混合層深度変動が、中規模渦と深い関わりがあることを示した。その成果は、共著者として参加する論文にまとめられ、専門雑誌に掲載された。さらに、データ同化チームと連携し、Argoフロート等の観測データを利用して4次元変分法大気海洋結合データ同化予測システムの開発に協力し、その成果が学会等で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全球塩分変動特性の理解にとって重要な混合層変動や熱交換過程について明確になりつつある。また、各海域で塩分変動特性が異なることが、詳細な解析によって明らかになってきている。作成されたデータセットは様々な研究者に活用され、連携研究として活用されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もデータ解析を進めるとともに、学会発表なども活発に行い、論文等としてまとめる。データ同化システムによるデータセットを用いた全球塩分変動特性の解析が想定より良い結果ではないため、他のデータセット等を用いた解析を検討する。可能であれば、米国で運用が始まった塩分観測衛星データを用いて、海洋内部の観測データと連携した解析の進め方を考える。一方、Argoフロートのデータおよび関連した各種データセットが、本課題に関連して他の研究者からも活用され始めているため、さらにその活用範囲を広げることを検討する。
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