Research Abstract |
本研究では,富山県の平地にある富山大学屋上を中心定点とし,山岳高所にある立山でも定点を設け,各定点で大気中の微生物を捕集し,分子生物学的手法等で細菌などの微生物群集の動態を解析する。その上で,気象との関連性や,検出した微生物種による生態系などへの影響を検討・評価することを目的としている。まず,富山大学理学部屋上で大気中微生物の濾過捕集を毎週行い,PCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)解析を試みたところ,濾過捕集は液量10L/minで3時間の条件が適当であり,細菌の16S rDNAの増幅にはnested PCR法が有効と考えられた。また,立山浄土山の頂上と富山大学理学部屋上で,夏季の同じ日時に同量の大気試料をサンプリングし,PCR-DGGE解析で比較を行ったところ,同じ細菌種に由来するバンドが認められる場合もあったが,バンドパターンに差異が多かったので,今後も比較解析を進める予定である。さらに,培養法による大学屋上大気からの微生物の検出は,メンブレンフィルターを使用して濾過捕集後,フィルターをR2A寒天培地とニュートリエント寒天培地にそれぞれ貼り付け,暗所培養を行った。これまでに46株の細菌を分離し,16S rDNA塩基配列を決定して同定を行ったところ,Firmicutes, Actinobacteria,α-Proteobacteriaに属するものが全体の87%と多いことが分かった。一方,立山における黄砂を含む積雪層中の細菌を培養法で調べたところ,同じ16S rDNA塩基配列(AB500941)を持つBacillus属菌を2008~2010年に検出し,これらの細菌が黄砂と共に長距離輸送されていた可能性が考えられた。また,黄砂を含む積雪層と他の積雪層では,細菌群集構造や全細菌数に違いのあることが明らかとなった。
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