2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的多様性に配慮した河川管理技術の開発―河川構造物と個体群の遺伝的分化
Project/Area Number |
22510031
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高木 基裕 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (70335892)
|
Keywords | 人口構造物 / 吉野川 / カワヨシノボリ / マイクロサテライト / 遺伝的多様性 / 遺伝的分化 / 陸封型 |
Research Abstract |
河川環境において堰・ダムなどの人工構造物が、魚類をはじめとした河川生物の生息における大きな限定要因となっている。本研究では、多数の構造物によって河川が分断されている四国4県にまたがる1級河川の吉野川をモデルとして、魚類鍵種の遺伝子交流の程度を解析するとともに、遡上および遡下を妨げる構造物設置の条件を解明し、魚類の生活史を考慮した河川管理手法の開発を行う。 供試魚は吉野川水系のカワヨシノボリを9地点からそれぞれ32から52個体用い、DNAを抽出した。増幅したマイクロサテライト領域は、電気泳動を行い分画した後、アリルサイズを決定し遺伝的多様度と分化程度を解析した。 遺伝的多様度を示すアリル数の平均値は、4.5~14.0の値を示し、早明浦ダム上流域の大北川個体群間で低く、早明浦ダム下流域の本山、貞光川および鮎喰川個体群で高かった。また、ヘテロ接合体率(期待値)の平均値は、0.484~0.769の値を示し、早明浦ダム上流域の大北川個体群間で低く、早明浦ダム下流域の本山個体群で高かった。各個体群間の遺伝的分化程度を示す異質性検定では、早明浦ダム上流部の個体群間で有意差が認められない組み合わせが多くみられた。以上の結果から、吉野川水系の個体群において生息地間の地理的距離に起因する遺伝的差異が確認されるとともに、人工構造物による分断の影響を受け、それぞれの個体群は遺伝的に分化していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年間の研究期間に3魚種(オオヨシノボリ・カワヨシノボリ・タカハヤ)の遺伝的多様性解析を行う計画であるが、これまでの2年間に2魚種の遺伝的多様性解析が既に終了しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度に残るタカハヤの遺伝的多様性解析を行えば、当初の計画通り研究を終了することができる。
|
Research Products
(5 results)