2011 Fiscal Year Annual Research Report
遊泳能力の低い冷水性底生魚を用いた、温暖化にともなう水温上昇の影響評価手法の確立
Project/Area Number |
22510034
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
棗田 孝晴 千葉科学大学, 危機管理学部, 講師 (00468993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古屋 康則 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (30273113)
田原 大輔 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (20295538)
山家 秀信 東京農業大学, 生物産業学部, 講師 (40423743)
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Keywords | 冷水性底生魚類 / 温暖化 / 水温 / カジカ種群 / 流程生息分布 / 河川工作物 / 河川内移動 / 産卵行動 |
Research Abstract |
本研究では、遊泳能力が乏しく、かつ冷水環境を好む底生の淡水魚類であるカジカ種群をモデル生物とし、水温上昇によるストレス因子が彼らの摂餌行動、成長、移動、繁殖および生殖生理活性に及ぼす影響について野外調査と室内実験の双方のアプローチによって検証し、地球温暖化にともなう冷水性底生魚類への影響評価手法を確立することを目的とする。野外調査は長野県千曲川水系(大卵型)、茨城県那珂川水系(大卵型)、福井県南川水系(中卵型・大卵型)で実施した。今年度の主な成果は以下の3項目である。 (1)標識再捕法を用いて河川工作物の上下区間のカジカ大卵型個体の移動を追跡し、落差50cm以上の区間では上流から下流への一方向的移動のみが生じていることを示した。また胸鰭・腹鰭条数の左右性のゆらぎ(FA)を指標として、工作物がカジカ飼体群の細分化に及ぼす影響を調べ、FAの出現頻度が堰が累積する上流域で高い傾向を見出した。 (2)カジカ(小卵型)の産卵行動を解析した結果、雄は雌を化学的および視覚的に巣に誘引していると考えられた。産卵直後の雄個体と卵塊を調べた結果、雄は多量に有している尿を放精時に放出することはなく、異型精子も放出されないことが示唆された。これより、雄の尿は産卵前に雌を巣に誘引するフェロモンを含んでおり、尿中に見られた異型精子はこのフェロモンの産生に関与している可能性が考えられた。 (3)福井県北川・南川の最下流の堰堤上下において、南川の堰堤上流ではカジカ中卵型の当歳魚は採集されたが、北川の堰堤上流では採集されなかった。また、両河川とも中卵型の成魚および当歳魚共に堰堤上流の生息密度は、堰堤下流に比べて半減していた。これより、カジカ中卵型の遡上および生息分布には第1堰堤およびその魚道の構造が影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カジカ大卵型((1)),小卵型((2)),中卵型((3))とも、それぞれの項目において具体的な成果が得られており、その成果の一部についても学会発表等で積極的に公表しているため、概ね順調に進展しているものと評価された。
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Strategy for Future Research Activity |
河川工作物が冷水性底生魚類の移動に及ぼす影響評価については、石組み等の設置による落差軽減措置後の効果の検証を、カジカ個体の堰間移動のモニタリング調査を通じて次年度で継続的におこなう方針である。
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Research Products
(21 results)