2010 Fiscal Year Annual Research Report
放射線高感受性メダカ胚を用いた発生中の中枢神経で起こる貪食機構解明
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22510056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保田 隆子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特任研究員 (40450431)
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Keywords | アポトーシス / 放射線傷害 / 発達神経毒性 / 貪食 / ミクログリア / whole-mount in situハイブリダイゼーション / p53 / メダカ |
Research Abstract |
ヒト胎児の脳に対する放射線影響は、広島・長崎の疫学調査より、器官形成期が終了し大脳皮質が形成される妊娠8-15週に被爆した胎児に高頻度の精神遅滞や小頭症などの悪影響が認められ、この時期が最も高感受性であることが判明している。そこで、この時期(器官形成期が終了し、脳が飛躍的に発達する)に相当するメダカ胚発生ステージ28を用いて、発生に影響を及ぼさないような比較的低い線量(X線10Gy以下)で脳に誘発される悪影響について、組織形態変化、アクリジンオレンジ染色法によるアポトーシスの発生、in situハイブリダイゼーション法によるアポトーシスの貧食をTILLING法により作出されたp53ノックアウトメダカ胚を用いて実験を行い、野生型(Hd-rR)と比較し、アポトーシスとそれらの貧食にp53遺伝子の果たす役割を明らかにする目的で実験を行った。その結果、p53遺伝子欠損胚では、1)1アポトーシスの発生遅延、2)発生期間の短縮、3)発生数の減少が認められ、p53遺伝子がアポトーシスの発生に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 さらに、ミクログリア細胞に特異的に発現するApolipoproteinE(ApoE)遺伝子をプローブとしたin situハイブリダイゼーションを行い、放射線照射によるその発現変化を調べた。その結果、照射後にApoEの発現は大きく上昇することが判明した。この変化は、野生型・p53遺伝子欠損胚、共に同様であった。中枢神経の発生過程で不要となった神経線維の除去に関わるアポトーシスの食食に関する詳細な報告は、ゼブラフィッシュやショウジョウバエなど多数あるが、放射線誘発アポトーシスの食食に関わる報告は見当たらず、本研究において、放射線損傷細胞の除去におけるミクログリアが果たす役割に関する新たな知見が得られたと考えている。現在、whole-mountinsituハイブリダイゼーションで染色された胚の連続切片を作成し、その発現の詳細を解析中である。
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