2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22510064
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
石井 直明 東海大学, 医学部, 教授 (60096196)
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Keywords | 放射線 / 線虫 / C.elegans / 耐性幼虫 / ホルミシス / 寿命 / 活性酸素 / インスリン・シグナル |
Research Abstract |
動物としての最小限の体制を持つ線虫は放射線に対して強い耐性を示すことから、この耐性機構の研究は生命の基本的な防御機能の解明のみならず、放射線による生じるガンや老化促進作用などの機構の解明と予防に貢献することができる。 線虫の一種C.elegansは餌が不足するような環境が悪化すると正常発生から外れて耐性幼虫と呼ばれるステージに移行する。耐性幼虫は餌なしで60日生存するが、その間に餌を与えると正常発生に復帰する。耐性幼虫の60日の期間中のどの時点で復帰させても、正常発生後の寿命が変化しないことから、耐性幼虫のステージをnon-aging stageと呼んでいる。このため耐性幼虫ではDNA傷害が蓄積しにくくなっている可能性がある。しかしさらに強い傷害を起こしたときには老化が促進することが考えられる。そこで耐性幼虫にX線を照射し、餌を与えて正常発生後の寿命を測定した。予想に反して100Gyの照射により寿命に40%の延長が観察された。この効果は若い幼虫期でも観察された。これは高線量の放射線に対して誘導された防御機構が放射線傷害のみならず、自然に生じた傷害も同時に修復したことを示唆している。 放射線は生体内で活性酸素を発生させ、また活性酸素はエネルギー代謝の副産物であり、エネルギー代謝の中のインスリン・シグナル伝達系はその下流で活性酸素の除去機能を制御していることが知られている。そこでインスリン・シグナル伝達系に関わる線虫の遺伝子であり、インスリン受容体の下流で働くage-1(PI3kinase)とdaf-16(転写因子)の突然変異体を用いて、放射線耐性に対するインスリン経路の関わりを調べた。その結果、野生株の幼虫期に見られた放射線耐性がage-1とdaf-16突然変異体では観察されず、線虫の放射線耐性にインスリンの経路が関与していることが示唆された。
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Research Products
(14 results)