2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22510064
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
石井 直明 東海大学, 医学部, 教授 (60096196)
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Keywords | 放射線 / 線虫 / C.elegans / 耐性幼虫 / ホルミシス / 寿命 / 遺伝子発現 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
【序論】放射線曝露は生体内に活性酸素を生じさせることで、DNAなどの生体分子を傷害し、発がんなどの悪影響を及ぼす。一方、低線量放射線は抗酸化作用を亢進することで、生体の恒常性維持に有益な作用を示す放射線ホルミシスを得られることが報告されている。本研究では線虫C.elegansの寿命延長における放射線ホルミシス効果の分子機序を、ゲノムワイドな遺伝子発現レベルで明らかにすることを目的とした。 【材料と方法】通常発生から外れた耐性幼虫期に線虫に、低線量放射線(X線30Gy)を照射し、通常発生復帰後の寿命延長効果を指標に放射線ホルミシスを確認した。耐性幼虫期に移行して1日目の虫は寿命延長効果を得ることができたが、30日目の虫はその効果を得ることができなかった。そこで、耐性幼虫期1日目と30日目の虫を、X線照射群と非照射群の4群に分け、マイクロアレイによるゲノムワイドな遺伝子発現レベルで解析を行った。 【結果と考察】寿命延長効果がみられた1日目のX線照射群と他の3群とを比較して、発現量が変動した遺伝子群を抽出した。その結果、代謝制御・ストレス応答に関するシグナル伝達酵素群・抗酸化系酵素群・ペプチダーゼ・プロテアーゼ酵素群・細胞骨格構築蛋白質群・自然免疫応答遺伝子群などの遺伝子に発現上昇が見られた。本結果から、成長因子(EGF、FGFリガンド)からのシグナルが、Cdc42を介してJNK経路が活性化したことにより抗酸化系機能の亢進を生じ、その一方で、cGMPを介して脂肪酸代謝・糖新生の亢進を生じることで、寿命延長効果が得られた可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的である耐性幼虫の放射線照射によるホルミシス効果の分子メカニズムの解明の基本となる、放射線照射による遺伝子発現の変化を捉えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射による遺伝子発現の変化を捉えることできたことから、来年度に寿命延長効果に寄与する遺伝子の特定が可能となった。 具体的には放射線照射により遺伝子発現が上昇した遺伝子を選び、その遺伝子発現の抑制や過剰発現モデルを作成して寿命を測定し、放射線照射に対して寿命延長効果を示す遺伝子を特定する。これにより線虫の放射線ホルミシスの分子メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(5 results)