2010 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー中性子測定による下層大気中の宇宙線環境の解明
Project/Area Number |
22510067
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
矢島 千秋 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 主任研究員 (20392243)
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Keywords | 宇宙線 / 宇宙線被ばく / 中性子 / フォスウィッチ検出器 |
Research Abstract |
本研究は、フォスウィッチ型シンチレーション検出器(フォスウィッチ検出器)を用いて宇宙線被ばく研究において関心の高い宇宙線中性子の地上測定を行い、人間の活動範囲である下層大気(0~15km)中の宇宙線環境を解明することを目指している。本年度は、まず、フォスウィッチ検出器、高圧電源、信号処理装置、ノートPC、バッテリー電源、気圧計等の測定に必要な機器を1つのケース内に組み込んだ可搬型中性子測定装置の製作を行った。装置外寸は約80cm×60cm×50cm、重量は約25kgである。なお、用いたフォスウィッチ検出器は航空機内宇宙線測定用に開発された既存の機器であり、従来の測定器より優れた分解能で10MeV以上の高エネルギー中性子スペクトル測定が可能な測定器として期待されている。次に、本測定装置を用いて、宇宙線中性子の緯度依存性観測実験を弘前市(北緯40.6°)、鹿児島市(北緯31.6°)において、高度依存性観測実験を富士山周辺(北緯35.3°近辺、高度500~2,300m)において実施した。中性子以外の宇宙線成分(陽子、電子、光子、ミューオン等)や地殻ガンマ線等の寄与も含んだ全シグナルの計数率(カウント毎秒)は、弘前市で3.96、鹿児島市で3.72、富士山周辺の高度約500m地点で4.01、同約1,500m地点で5.28、同約2,300m地点で6.85となり、宇宙線強度が高緯度ほど、高高度ほど増加するという性質に概ね合致する結果となった。次年度も引き続き観測実験を行い、本年度取得データと合わせて中性子シグナル弁別、エネルギースペクトル導出等の解析を進める予定である。
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