2011 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲン活性を有する内分泌撹乱化学物質類の学習記憶能に及ぼす影響評価
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22510069
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山下 樹三裕 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 教授 (50192399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 康子 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (80291532)
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Keywords | 内分泌撹乱化学物質 / 周産期曝露 / 学習記憶 / 中枢神経機能 / 一般活動性 / 情動 |
Research Abstract |
ビスフェノールA(BPA)は、女性ホルモンであるエストロゲンと類似した作用を持つことが確認されており、妊娠中にBPAを摂取した場合、胎仔や新生仔の脳に影響を及ぼすことが報告されている。よって、BPA周産期曝露が雄性ラットの中枢神経機能に及ぼす影響を調べる目的で、SD妊娠ラットに妊娠10日目から出産後14日目までの周産期間中に、ヒトでのTDIとされている50μg/kg/dayとその10倍量の500μg/kg/dayのBPAを経口投与した。そして、出生した雄性仔ラットにおける空間学習記憶能・一般活動性・情動性・体験型学習記憶能について評価した。空間学習記憶能の測定にはMAZE testとwater maze testの2種類の測定法を用い、一般活動性・情動性の測定にはOpen field testと高架式十字迷路テストを、体験型学習記憶能の測定にはStep through testを用いた。 可変式迷路(MAZE)を用いて行った空間学習記憶能に及ぼすBPA周産期曝露の影響を調べた結果、BPA 50μg/kgの周産期曝露は空間学習記憶能を有意に低下させ、学習曲線を阻害することが示唆された。しかし、BPA 500μg/kgでは学習曲線をやや阻害したが、有意差は認められなかった。一方、water maze testでは、いずれの用量においても有意な影響は認められなかった。これは、報酬自発運動と強迫的運動との差によることが推察される。 また、体験型学習記憶能について影響は認められず、一般活動性および情動性についても、有意な変化は認められなかった。 以上より、低用量BPA周産期曝露は空間学習記憶能を特異的に阻害することが示唆され、BPAのTDIについて、再検討を考慮する必要性があるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種エストロゲン活性化学物質周産期曝露の学習記憶能に及ぼす影響評価および学習周辺行動に及ぼす影響評価は、ビスフェノールAについては完了し、ノニルフェノールについてもほほ終えている。被験薬物脳実質内微量注入による学習記憶への影響も一部を残すのみである。受容体解析についても着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
エストロゲン活性を有する内分泌撹乱化学物質類の周産期曝露の学習記憶能および学習周辺行動に及ぼす影響評価について、今年度はゲニステイン等を計画している。脳実質内薬物微量注入実験については、順調に実験が進行しており、一部例数追加実験を計画している。受容体解析については、各種抗体を用いてすでに一部は着手し、今後さらに進展させる。
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Research Products
(2 results)