2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダイオキシン暴露による新規のアカゲザル腎形成異常とその発生機序の解析
Project/Area Number |
22510073
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
福里 利夫 帝京大学, 医学部, 教授 (50134531)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 芳久 帝京大学, 医学部, 准教授 (70334381)
近藤 福雄 帝京大学, 医学部, 教授 (80186858)
久保田 俊一郎 東京大学, 総合文化研究所, 教授 (00260480)
|
Keywords | ダイオキシン / TCDD / 腎 / 形成異常 / dysplasia / sox2 / prostaglandin / 次世代 |
Research Abstract |
内分泌かく乱物質の次世代への影響が問題になって久しいが、その実体や機序は未だ明らかでない。特にヒトやほ乳類におけるデータは乏しい。これまでに私どもは、胎生期および授乳期に2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD>に暴露された仔アカゲザルに新規腎形成異常を高頻度に見いだした。本研究ではこの新規腎形成異常の障害部位の同定と発生機序を解析することを目的とする。 本年度の成果: 1.比較的高用量(300ng/kgBW)を皮下投与された母体から生まれた仔アカゲザル(Fl)にのみ29頭中17頭(58.6%)で腎病変の出現が認められたが、早期死亡例の活動性病変を検討するために、早期死亡群と7年間経過観察後の屠殺群に分けて解析した。 2.腎組織および肝組織中のTCDD濃度測定の結果、早期死亡群ではTCDDの残存がみられたが、生後7年目の屠殺群ではTCDDが認められなかった。 3.ヒト疾患との類似性;ヒトのrenal dysplasiaに近い病変と判断され、TCDDによる腎障害としてこれまで報告されていない病変であった。 4.障害部位:ネフロン単位の脱落および形成不全とともに、今回新たに血管内膜の病変が同定された。 5.障害機序:生後早期死亡例の腎内動脈血管内皮細胞にCOX-2、CYPIAIの発現増強がみられ、緻密斑でもCOX-2の発現増強が認められた。長期観察群の腎では、COX-2、CYPIAI、HSP70の発現異常はみられなかった。腎病変の発生機序にCOX-2-prostaglandin系が関与している可能性を明らかにした。 6.mRNAの網羅的発現解析およびmicroRNAの解析結果:新たにDnaJ(HSP40)、intelectinlの発現増強、Cyp2C8の発現減少などが長期観察例の腎病変でみられたが、COX-2-prostaglandin系の変化は明らかでなく、二次的変化の可能性を否定できなかった。 7.他臓器における病変との関連:これまでに歯の形成異常、骨組織の変化、唾液腺の腫大と粘液腺の減少などを報告してきた。歯の形成異常を伴う例では腎病変も高頻度にみられた。しかし、唾液腺あるいは骨組織の病変との関連は明らかでなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TCDDが残存した状態の検体解析を少なくするために長期観察後の計画的屠殺例の検討を広範囲で詳細に行ったきた。また、早期死亡例は死亡時の予測が困難で、固定前の生検体の採取が適切に行われない例が多く、固定前検体の解析が制限された。そのため、活動性の病変の解析が遅れた。しかし、長期観察例の病変とは異なって早期死亡例に活動性病変が見出されたので、今後は、TCDDが残存した状態における早期死亡例の活動性病変の解析を重点的に行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.今後の検討課題:早期死亡例の解析を重点的に行う。 (1)障害部位:血管病変の定量的評価 (2)障害機序;COX-2-prostaglandin系で情報伝達系の上流および下流の分子を解析する。また、下垂体後葉浸透圧系における変化を解析する。 (3)遺伝子解析:早期死亡例の遺伝子発現解析およびmicroRNA解析 2.全体のまとめと論文執筆
|
Research Products
(3 results)