Research Abstract |
室内空気に存在する化学物質は,建材や施工材から一次的に発生する物質と,これらの物質がオゾン等により空気中で化学反応を起こし二次的に生成する物質が存在する。一次発生物質に関しては多くの研究が行われてきたが,二次生成物質に関しては報告が少ない。本研究の目的は,どのような二次生成物質が,どの程度存在するのか,また,人の健康にどの程度影響を及ぼすのかを明らかにすることである。 二次生成物質としては,アルデヒド類などのカルボニル化合物が想定されるが,本年度はアルデヒド類,および関連物質であるオゾンの分析法について検討を行った。アルデヒド類の中でもアクロレイン等のα,β-不飽和アルデヒド類は,重合や付加反応が起き易く,正確に分析することは不可能であった。そこで,アクロレインの捕集剤として,ラジカル重合禁止剤であるハイドロキノンを含浸させたシリカ(HQ-シリカ)の適用を検討した。2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)-カートリッジの手前に,HQ-シリカを充填したカートリッジ(HQ-カートリッジ)を接続することによって,DNPH-カートリッジ中におけるヒドラゾン誘導体やアクロレインの分解や重合を防ぎ,アクロレイン等α,β-不飽和アルデヒドを含む広範囲のカルボニル化合物の分析方法を可能にした。次に,オゾンとアルデヒド類を同時に分析可能な拡散サンプラー(DSD-BPE/DNPH)の開発を行った。空気中のオゾンはtrans-1,2-ビス(2-ピリジル)エチレン(BPE)と反応してピリジン-2-アルデヒド(2PA)を生成する。また,2PAとカルボニル化合物は2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)と反応してヒドラゾン誘導体を生成するので,オゾンとカルボニル化合物を同時測定できる。また,DNPHと共存するBPEはオゾンスクラバーとしても機能することも明らかになった。
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