Research Abstract |
本研究の目的は,どのような二次生成物質が,室内にどの程度存在するのか,また,人の健康にどの程度影響を及ぼすのかを明らかにすることである。平成23年度は,前年度に引き続き二次生成関与物質の測定法の開発を主に行った。テルペン等の揮発性有機化合物(VOC)の分析では,VOCを活性炭に捕集してイオン液体を脱離溶媒とするヘッドスペース法を開発した。バイアル中に室内空気を捕集した活性炭とイオン液体を加えて密封する。これを一定条件下で加熱することでイオン液体が溶解し,活性炭に捕集された空気成分が脱離する。生じた気相部をGC/MSに導入して測定を行った。その結果,溶媒抽出法との比較では検出感度の大幅な上昇が確認され,従来の溶媒抽出法では分析が困難であったSCANモードでのベンゼンの測定が可能となった。また,テルペンの二次生成物質と思われるアルデヒド類の高湿度化における分析についても検討を行った。空気中アルデヒド類の測定法であるDNPH誘導体化法は,オゾンの干渉を受けるため,ヨウ化カリウム(KI)を用いたオゾンスクラバーが使用されている。しかし,このKIは高温,多湿時に捕集を行うと湿潤し,そこにアルデヒド類が溶け込む問題が指摘されている。そこで,高温,多湿時でも使用できるオゾンスクラバーについて検討を行った。その結果,trans-1,2-ビス(2-ピリジル)エチレンやハイドロキノンを用いたオゾンスクラバーは,湿度の影響を受けず,幅広い天候に対応できることが明らかになった。この他,小型チャンバーを用いて天然の木材表面から放散するカルボニル化合物の測定を行った。その結果,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,プロピオンアルデヒドなど比較的炭素数の小さいカルボニル化合物の放散が確認された。また,これらの物質は,木材の圧縮率によって放散量が変化し,30~50%のとき最大となった。さらに,木材表面から放散するカルボニル化合物は,木材表面に尿素を塗布することで,放散速度が大幅に減少することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,室内空気中に存在する化学物質の二次生成メカニズムを明らかにし,人への影響を評価することである。そのためには,二次生成関与物質(オゾン,アルデヒド類,テルペン類)の分析が必要になるが,これらの物質を分析するために,2種類の拡散サンプラー(オゾンとアルデヒド類の同時測定用,アンモニア用)を開発した。また,これらのサンプラーに関する論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,室内空気測定用の各種拡散サンプラーを完成させたので,これらを用いて全国的な実態調査を行う。具体的には,ベンゼン等揮発性有機化合物測定用のDSD-VOC,オゾンとカルボニル化合物測定用のDSD-BPE/DNPR,二酸化窒素等酸性ガス測定用のDSD-TEA,アンモニア等塩基性ガス測定用のDSD-NH3を,全国200戸の住宅に配布し測定を行う。この測定結果から,全国の二次汚染の実態を明らかにする。
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