2011 Fiscal Year Annual Research Report
バイオレメディエーションを目指した有機ヒ素化合物の嫌気的微生物変換機構の解明
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22510083
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
原田 直樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50452066)
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Keywords | 有機ヒ素 / ジフェニルアルシン酸 / 嫌気分解 / 微生物多様性 / DGGE / 水田土壌 / 硫酸還元 / バイオレメディエーション |
Research Abstract |
二度の世界大戦の後に世界各地で遺棄された化学兵器等に由来する有機ヒ素化合物が土壌・地下水汚染を引き起こし、大きな問題となっている。人への健康被害も発生していることから、こうした有機ヒ素汚染土壌の浄化を早急に行う必要がある。しかし、特に広範囲・低濃度な汚染に対しては、排土や洗浄といった物理化学的な浄化法の適用は難しく、より効率的で低コストな手法の確立が望まれている。本課題では、バイオレメディエーション法、つまり微生物を用いての有機ヒ素汚染土壌の新たな修復技術の開発を念頭に、土壌の有機ヒ素汚染物質として最も重要なジフェニルアルシン酸(DPAA)の還元的微生物変換機構の解明を目的に研究を行っている。平成23年度は、DPAAを添加した湛水土壌の培養実験を実施し、動的な群集構造への影響をRT-PCR-DGGE法で調べた。その結果、DPAAは活性のある細菌及び古細菌群集にほとんど影響しないことが判明した。また由来や性状の異なる4種類の土壌を用いてDPAAの動態を調べたところ、水田土壌では畑地土壌よりDPAAの変換能が大きいこと、畑地土壌でも稲わらの添加によってDPAA変換が促進される場合と、ほとんど影響がない場合があることが明らかとなった。さらに、最もDPAA変換能の低い土壌を用いて各種資材の添加実験を行ったところ、硫酸根と有機物の存在下で有意にDPAAの変換が促進され、未知代謝物が生じることを見出した。モリブデン酸ナトリウムを用いて硫酸還元を阻害するとDPAAの変換が行われないことから、DPAAの還元的変換に対する硫酸還元菌の関与が推察された。生成した未知代謝物については現在その構造を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画では、(1)有機ヒ素の微生物変換に関わる微生物群の解析、及び(2)代謝物の同定と代謝経路の推定を平成22~23年度、(3)有機ヒ素の微生物変換の促進要因の検討を平成23~24年度に実施する予定であった。このうち、(1)は計画通りに終了、(2)はまだ代謝物の同定に至っておらず、(3)については前倒しで終了した。このことから、(2)にあたると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ジフェニルアルシン酸の還元的微生物変換に関わる影響因子が明らかになったことから、今後は未知代謝物を同定し、代謝経路をあきらかにすることに集中して研究を行う。その際に必要な機器(LC-ICPMSやLC-MS)はすでに使用可能な状態にあり、研究の遂行上、問題点はない。
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Research Products
(1 results)